<社説>森友交渉記録 首相と財務相は辞任を


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 これで安倍昭恵首相夫人が関わっていないとは、到底言えないのではないか。

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省は近畿財務局と森友側との面会、やりとりなどを記した交渉記録を国会に提出した。
 記録には、昭恵夫人付の政府職員が2015年11月、理財局に電話で「森友学園が社会福祉法人同様、介護施設向けの優遇措置を受けられないかと首相夫人に照会があり、問い合わせた。学校法人に拡大されるなど、今後の方針について教えていただきたい」と優遇措置について問い合わせたことが明記されている。
 安倍晋三首相は「値下げをしてくれということでなく、制度上の問いをしている」と述べ、問題ないとの考えを示している。
 果たしてそうか。問い合わせた職員は昭恵夫人の指示で理財局に質問しているのである。たとえ制度上のことを聞く趣旨だったにしても、森友学園の意向を受けて首相夫人が動くこと自体、大きな問題である。
 財務省関係者は、安倍首相への忖度そん(たく)が働いたかは分からないとしつつも「首相夫人の名前がプレッシャーとなったのは間違いないと思う」と共同通信の取材に答えている。
 森友学園が開校を目指した小学校に昭恵夫人が関わっていたことが、国有地売却価格の大幅値引きにつながった可能性は否定できない。
 安倍首相は森友学園の小学校の認可や国有地払い下げに関し「私や妻、事務所が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」としていた。辞する時はとうに過ぎている。
 格安払い下げ問題が発覚した17年2月以降、理財局長だった佐川宣寿氏の「交渉記録は廃棄した」との国会答弁との整合性を図るため、財務省は実際には保管していた交渉記録を破棄していた。記録を基に答弁しなかったことをとがめるのではなく、答弁に合わせて記録を破棄したというのだ。言語道断である。
 財務省は佐川氏の「(国有地売却は)法令に基づき適切に管理、処分を行った」との国会答弁にも合わせるため、決裁文書を改ざんしていた。佐川氏の答弁説明は明らかに虚偽であり、許されない。
 虚偽答弁に端を発した記録廃棄、決裁文書改ざんなど、財務省の一連の行為の背景には、安倍首相への忖度が強く働いたと見るのが自然である。財務省は国民の代表で構成する国会を欺いた。強く抗議する。
 麻生太郎財務相は決裁文書改ざんが発覚した際「理財局の一部の職員により行われた」と述べた。最終的な責任者は佐川氏と説明し、財務相に居座り続けている。
 安倍首相は「行政の最終責任は総理大臣の私にある」と述べている。財務省が犯した暴挙の責任を取る必要がある。言葉だけでなく、行動に移す時である。当然、麻生財務相も辞任すべきだ。