<社説>世界遺産取り下げ 自然と基地は相いれない

 政府は世界自然遺産候補の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦をいったん取り下げることを閣議了解した。

 今後、推薦書を再提出する際、遺産価値に挙げていた生態系と生物多様性のうち、生物多様性に絞ることも決めた。理由はユネスコの諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)の勧告で、生態系の連続性を確保できていないと判断されたためだ。
 「資産の分断が生物学的な持続可能性に重大な懸念がある」と指摘された場所は、未返還の米軍北部訓練場を指しているはずだ。推薦地を分断する形で存在しているからだ。
 北部訓練場は2016年12月に過半の4010ヘクタールが返還された。しかし現在も3500ヘクタールが残されている。登録延期を勧告したIUCNは、返還された北部訓練場跡地を推薦地に含めるよう求めた。
 理由として推薦地の「価値と完全性を大きく追加するもの」と意義付けた。その推薦地を「世界的な絶滅危惧種の保護のために高いかけがえのなさを示す地域」と評価した。生態系を維持する上で、極めて重要な地域なのだ。それは訓練場として残された地域も同様だ。
 政府は訓練場跡地を国立公園に編入後、推薦地に追加し、遺産価値を生態系に絞った上で19年2月までに推薦書を再提出し、20年夏の登録を目指す。
 この地域を世界自然遺産として登録されることは極めて意義深い。そうであるからこそ、推薦書の遺産価値を生物多様性に絞るのではなく、当初通りに生態系も含めるべきではないか。
 そのためには北部訓練場の全面返還が欠かせない。さらに生態系の価値を認めさせるためには、推薦地を陸地だけでは不十分との指摘もある。日本自然保護協会は声明で「森川海の生態系の連続性を示すことができる流域・沿岸域・海域まで含めて推薦地へ組み込むことが重要である」と指摘した。
 本島北部の海域を推薦地に含めるならば、貴重なサンゴが群生する名護市の大浦湾を埋め立てることなどできないだろう。米軍普天間飛行場の返還に伴う名護市辺野古の新基地建設について、IUCNは陸地だけの推薦地としては「登録に与える影響に懸念があったが、一定の距離がある」としている。
 その一方で「厳格な外来種の防除対策」を求めている。環境負荷を危惧する意見が出ていたことも勧告に記された。自然遺産と米軍基地は相いれないのだ。
 世界自然遺産条約は、人類共有の価値ある自然または文化を未来に引き継ぐことを目的にしている。人類の宝ともいえるやんばるの自然を未来に残すためには、戦争を引き起こす米軍基地を残すことは許されない。