<社説>社会保障費190兆円 待ったなしで本格論議を

 安心できる老後は訪れるのだろうか。厳しい数字が突き付けられた。

 高齢者数がピークを迎える2040年度に、社会保障給付費が約190兆円に達するとの推計を政府が初めて公表した。18年度の121兆円の1・6倍になる。国内総生産(GDP)比では、2・5ポイント増の最大24%まで上昇する。
 財源をどうするのか。国や自治体の公費と国民負担の社会保険料を今よりもそれぞれ30兆円超ずつ増やさないと成り立たない。給付と負担の在り方について、早期に議論を本格化させないといけない。
 40年度の給付費の内訳は、年金が73兆2千億円、医療が66兆7千億円か68兆5千億円(2通りの推計)、介護が25兆8千億円、子ども・子育てが13兆1千億円、生活保護などの「その他」が9兆4千億円となる。
 とりわけ、医療と介護が全体の増加を押し上げている。医療の高度化に加え、75歳以上人口の増加で介護の需要が高まるためだ。
 政府はこれまで、団塊の世代が75歳以上になり急激な高齢化が進む25年度までの推計値しか出してこなかった。今回は、その先の見通しを示した数値だ。
 民主党政権時代の12年、民主、自民、公明3党が25年度を目標に「社会保障と税の一体改革」で合意し、消費税率10%への引き上げとそれに伴う社会保障の充実を打ち出した。消費税率は14年に5%から8%に引き上げたものの、その後は安倍晋三首相が10%への引き上げを2度延期し、ゴールは見えていない。
 40年度に190兆円だと、財政赤字解消分などを合わせて、消費税率を22%まで引き上げないといけないとの専門家の試算もある。
 増税だけで賄うには到底厳しい。自己負担の仕組みについて、現在の年齢別から収入や財産など負担能力に応じたものに改めるなど、制度の根本的な見直しも不可欠だ。
 40年は団塊ジュニア世代が65歳以上になる年だ。高齢者は増える一方、15~64歳の現役世代が今より約1500万人も減る。
 働き手不足も深刻だ。政府の試算では、40年度に医療、介護、福祉分野で1065万人が必要になる。就業者の5人に1人が同分野で働かないとカバーしきれなくなる。
 安心できる将来像を描くために、税金や保険料の負担を増やすのか、給付を抑えるのか、サービスを見直すのか。喫緊の課題は山積している。
 しかし政府、与党内には議論を先送りする空気が漂っているという。来年の統一地方選や参院選を見据え、官邸筋には消極的な声もある。
 社会保障は国民の暮らしに直結する問題だ。待ったなしで取り組まないといけない。難題から逃げずに、正面から議論を進めるべきだ。持続可能な社会保障への青写真を早めに示し、国民を安心させてほしい。