<社説>首相の誤答弁 墜落事故を軽く見ている

 米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が今月11日に沖縄本島南方の海上に墜落した事故に関し、安倍晋三首相は25日の参院予算委員会で「(飛行)中止についてわれわれが申し入れを行い、2日間ではあるが(米軍が)中止し点検したと承知している」と答えた。

 しかし今回の事故を受け、政府が米軍側にF15戦闘機の飛行中止を公式に求めた形跡はなく、首相の答弁は明らかに誤りだ。
 やってもいない飛行中止要請を「申し入れた」と言ってのけるのは、首相自身が墜落事故を軽く見ている証左と言えよう。少なくとも、事の重大性を理解していれば、事故後の対応について、防衛省や外務省に逐一報告を求めたはずだ。飛行停止を申し入れていないことは、官僚の用意した答弁資料を見るまでもなく頭に入っていただろう。
 米軍機の事故は一歩間違えば大惨事に直結する。本来なら首相自身が米国政府に直談判してでも、飛行再開を阻むべき事案だ。
 今回のケースでは、事故原因が明らかにされない中、2日後の13日に飛行が再開され、日本政府は米軍に異議を唱えることもなく、唯々諾々として追認している。政府の姿勢からは、何としても国民の生命を守ろうという意志がうかがえない。
 参院予算委で野党議員が「2日後の再開で良かったとの認識か」とただしたのに対し、安倍首相は「かつて沖国大の墜落事故があって以来、ずっと事故があっても申し入れすら行ってこなかった。事実でないのであれば具体的な例を挙げてご反論いただきたいが、その反省の上に立って私たちは申し入れを行っている」と胸を張った。
 驚くべきことは、事実誤認に基づく答弁をしたにもかかわらず、修正をしなかった点だ。あそこまで大見えを切ったので引っ込みがつかなくなったのかもしれないが、誠意ある態度とはほど遠い。
 この点について、小野寺五典防衛相は26日の記者会見で、「(首相は)『米側に対し安全管理、再発防止の徹底について強く申し入れ、米側は徹底的な点検のため訓練飛行を中止したところだ』とお答えしている。その趣旨でお話しされたと思う」と釈明し、議事録修正の必要性を否定した。
 F15の飛行中止を要求したかどうかは、事故に向き合う政府のスタンスを知る上で重要なポイントだ。間違いを放置すれば、誤った情報が後世に伝わり、独り歩きしかねない。国権の最高機関である国会の権威にも関わってこよう。
 小野寺防衛相は「(首相は)さまざまなやりとりの中でお答えした」と述べ、事実誤認ではないとの認識を示したが、こじつけにしか聞こえない。
 「過ちては則(すなわ)ち改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」と論語にある。今の政権には、間違いを認め、改める姿勢が決定的に欠けている。