<社説>W杯8強ならず 日本の健闘たたえたい

 日本代表のサッカー・ワールドカップ(W杯)が終わった。2002年日韓大会、10年南アフリカ大会に続く3回目の決勝トーナメント進出を果たしたが、8強の壁は今回も突破できなかった。

 開幕前の悲観的な予想を覆して初戦で強豪コロンビアを撃破すると、その後も緊迫した試合が続き、日本中を熱気に包んだ。日本代表チームの健闘をたたえたい。
 サッカーW杯は、出場を懸けた予選や大会までの親善試合一つ一つが注目され、厳しい批判にさらされる。今回は、本番まで2カ月という時期にハリルホジッチ監督が解任される波乱があった。後任の西野朗監督によるベテラン重視の代表起用は議論を呼んだ。大会直前の親善試合は3試合目でようやく勝利し、酷評もあった。しかし、大会初戦の快勝で風向きが変わった。絶賛の声とともに快進撃への期待が高まった。
 1次リーグ最終のポーランド戦では、今大会から導入された警告数などのフェアプレーポイントの優位を生かそうと、終盤、ボールを回すだけで時間を費やした。ゴールに向かわないプレーはブーイングを浴びた。その結果、試合に敗れながら、順位が並んでいたセネガルをぎりぎりでかわして16強進出をもぎ取った。大きな賭けでもあったが、リスクを冷静に判断した戦術であり、結果につながったことは評価すべきである。
 西野監督は、攻撃サッカーを信条にJリーグで実績を上げ、代表監督就任前は日本サッカー協会の技術委員長を務めていた。日本サッカーを知り尽くしているからこそ、意外性のある戦略・戦術を見いだしたのではないか。日本の勝利は初戦だけだが、決勝トーナメント1回戦を含む4試合で6得点は、02年日韓大会の5得点を上回った。決定力不足を言われてきた日本代表のイメージが払拭(ふっしょく)される日もそう遠くはない。
 今大会では国際サッカー連盟(FIFA)ランキング1位のドイツが1次リーグで姿を消す波乱があり、メッシ選手が軸のアルゼンチン、ロナルド選手を擁するポルトガルが16強止まりだった。各国の才能ある選手が世界の強豪クラブを渡り歩く時代となり、出場国のレベルの差が縮まっていると指摘される。その中で、海外で経験を積んだベテラン勢の奮闘が光った日本代表の結果は、次の世代に勇気を与え、サッカーファンに次こそと夢を持たせてくれた。
 一方で、勝敗にのみ熱狂することには怖さもある。日本に敗れた初戦で退場となったコロンビアの選手が、ツイッターで殺害を示唆される騒ぎがあった。移民系選手の言動が波紋を呼んだ例もあった。ナショナリズムが高じて差別や排外主義につながってはならない。
 頂点を目指す熱戦はこれからも続く。国境や民族を超えた相互理解と平和創造につながる大会となることを願う。