<社説>各地で豪雨災害 自助、共助で備え万全に


社会
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 台風7号が去った後も県内では各地で豪雨が続いている。「50年に1度」という記録的な大雨を3日に観測した久米島では4日も観測史上最大の雨となり、コンクリート製の塀が学校側へ倒れたり、県道242号が土砂崩れで通行止めとなったりした。

 今帰仁村では世界遺産の今帰仁城跡の城壁が幅9・7メートル、高さ6・4メートルにわたり崩れた。5日は宮古島、八重山でも記録的雨量だった。
 久米島で起きた学校への塀倒壊は、大阪北部地震で高槻市の小学校の壁が倒壊して同小4年生の命を奪った事故を想起させ、冷や汗が出る。
 行政や地域は倒壊の原因を調べ、対策を講じる必要がある。人的被害が起こってからでは遅い。天災を人災にしないよう、行政、地域そして個々人の備えが必要だ。
 豪雨災害で思い出すのは2006年6月に中城村北上原で起きた大規模な地滑りである。梅雨時の雨が降り続く中、高台を走る村道坂田線、中腹の県道35号が陥没、斜面が崩れ落ちた。崩落は次第に拡大し、土砂はすそ野の安里集落の民家付近まで押し寄せた。
 前日まで通行していた県道が翌日にはそっくり崩れ落ち、大量の土砂が木々をなぎ倒しながら安里集落にじりじりと迫っていった光景はいまも忘れられない。
 この地滑りで100世帯、360人以上が避難した。2年近くを仮設住宅で過ごした世帯もあった。
 中城村の地滑り災害は決して人ごとではない。県内には土砂災害警戒区域が1181カ所もある。国の調査によると、北中城村から中城村、西原町に至る延長約8キロをはじめ県内各地に地滑り危険箇所が分布する。
 昨年には特に危険と認められ、開発行為や建物の構造が規制される特別警戒区域に伊平屋村内の9カ所が指定された。県は2021年度まで特別警戒区域の指定作業を進める。指定はさらに増えるだろう。
 地滑りが起きると高台の土地だけではなく下の集落まで被害が出る。低地だからと油断はできない。生活道路が遮断されることで集落が孤立化する場合もある。
 台風銀座と呼ばれる沖縄だが、今年は早くも6月から台風に相次いで襲われている。台風6号、7号は発生から沖縄地方に接近するまで1~3日と短かった。風雨が急に強まり、対策は後手に回りがちだ。4日に発生した台風8号は週明けには沖縄地方にかなり近づく可能性がある。
 豪雨などの災害時、各自治体は避難所を設けるなど対策を講じるが、高齢者や障がい者には自力で避難するのが困難な人もいる。そこにも目配りが必要だ。
 行政が救援態勢を整える「公助」の充実は不可欠だが、さらに自身の命を守る「自助」、地域で助け合う「共助」の精神が防災強化につながる。いま一度、備えを確認しよう。