<社説>西日本豪雨 被災者救出に全力尽くせ


社会
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 街ごと水に漬かり、車は流され、孤立した住民たちが救助を叫ぶ。家々が泥水に沈んだ惨状は目を覆いたくなる。

 西日本を襲った記録的豪雨による被害は、拡大の一途をたどっている。死者は120人を超えた。土砂災害は少なくとも201件、河川の浸水は199カ所、避難者は1万1千人に上るという。まだ行方不明者が多数いる。救える命がある。政府は被災者の救出に全力を尽くすべきだ。被災自治体を財政支援する激甚災害の早期指定を含め、災害対応を最優先に取り組む必要がある。
 記録的な豪雨は、九州から近畿にかけて前線が長い時間停滞し、南から暖かく湿った空気が流れ込んだことで起きたという。西日本各地で降水量の記録を更新した。
 予測しにくかったとはいえ、なぜここまで被害は拡大したか。備えは十分だったか。甚大な被害を教訓に、改めて防災や避難などの在り方を検証しなければならない。
 その課題の一つが、大雨特別警報の実効性だ。気象庁は今回、過去最多となる9府県に出して最大級の警戒を求め、自治体も住民に避難を呼び掛けた。それは住民に十分行き届いただろうか。増水した川に近づいたり、避難せずにとどまった自宅で土砂崩れに巻き込まれたりして被害に遭った人々もいたという。
 特別警報は2011年の紀伊半島豪雨などで危険性を十分伝えられなかったとの反省から13年に運用を始めたものだ。警報の発表基準をはるかに超える「数十年に1度の現象」を基準に発表し、都道府県は市町村に、市町村は住民に、それぞれ伝えるための措置を取らねばならない。今回、これだけ甚大な被害が発生したのは、特別警報が十分に周知されていなかったことも一因ではないのか。
 専門家は「特別警報と、自分に危険が迫っていることがつながっていないのでは」と指摘する。そうであるなら、特別警報が出された場合、どう動くべきか普段から確認し、避難訓練で具体的に体験するなどして行動を身に付けておく必要があるだろう。
 河川の堤防決壊も被害を拡大させた。堤防の高さや構造は今回の雨量を想定していなかったのかもしれない。だがこれを機に、想定外の防災も含めて災害に強い街づくりを再考すべきだ。
 一方、沖縄には猛烈な勢力の台風8号が接近している。本島と先島は10日から強い風などの影響が出るという。近年沖縄に接近した台風の中でも異常に強い勢力を持つ。
 県内の台風7号やその後の大雨の影響で各地は地盤が緩んでいるとみられる。台風に備えるとともに、避難する場所やタイミングなど、いざという時の行動を再確認してほしい。
 事前の備えの徹底こそが、被害を最小限に抑える最大の対策である。