<社説>西日本豪雨1週間 被災者の生活再建を急げ


社会
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 西日本豪雨で広範囲に大雨特別警報が出されてから1週間が過ぎた。今も6千人近くが避難生活を余儀なくされている。政府は、被災者の生活再建に向けて、あらゆる方策を講じてもらいたい。

 停電やガスの供給停止は回復しつつあるが、水道は復旧に時間がかかる見通しだ。13日正午現在でも20万5千戸余りが断水している。生活に欠かせない水を使えない不便は計り知れない。
 避難所の仮設トイレが和式だと、足腰が弱ったお年寄りにとっては用を足すのも一苦労だ。だからといってトイレに行く回数を減らそうと、水分補給を控えれば、エコノミークラス症候群のリスクを高める恐れがある。
 長い時間、同じ姿勢を続けることが発症の引き金となる。脚の静脈に血栓ができ、血栓が肺の血管を詰まらせると命にかかわる。2016年の熊本地震ではエコノミークラス症候群と診断された被災者が相次いだ。同じ姿勢でいるのを避け、適度に体を動かすことが予防になる。
 被災地では、厳しい暑さが続く。熱中症や食中毒も懸念される。医師や看護師らが避難所を巡回し健康状態をこまめにチェックすることが重要だ。とりわけ、体力の低下した高齢者や持病のある人には細心のケアが求められる。過去の災害の教訓を忘れてはならない。
 交通網が寸断され物流が大きな打撃を受けた。浸水被害で営業を中止したスーパーやコンビニも多い。
 飲料水、食料、生活物資を確実に被災者に届けると同時に、彼らのストレスを取り除く努力が求められる。そのためには、安心して生活できる環境を整えなければならない。ライフラインの整備と仮設住宅の確保が急務だ。
 復旧の手助けをしようと、ボランティアも活動を開始した。家屋内外の清掃や泥の片付けのほか、安否不明者の捜索に加わる人もおり、善意の輪が広がっている。14~16日の3連休に多くのボランティアが訪れることを想定し、全国社会福祉協議会はマスクやスコップ、飲食料などの持参を呼び掛けた。
 こうした中、インターネット上では「レスキュー隊のような服を着た窃盗グループが被災地に入っている」といった事実に基づかないデマが拡散した。被災し無人となったコンビニの現金自動預払機(ATM)から現金を盗もうとした窃盗未遂事件も起きた。
 善意の一方で、被災地を混乱させるフェイクニュースが横行したり、火事場泥棒のような犯罪が起きたりしたことは残念だ。
 熊本地震を経験した大西一史熊本市長は、物資の洪水を防ぐためにも「今は物資より義援金など金銭的な支援が一番良い方法だと思う」とツイッターでコメントした。
 被災地の復興のために何ができるかを皆で考え、実行に移したい。