<社説>300校の塀不適合疑い 詳細調査で危険除去を


社会
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 県内の公立幼小中学校、県立高校、特別支援学校717校のうち、438校で設置されているブロック塀を目視調査したところ、300校の塀が建築基準法に適合しないとみられることが分かった。

 塀の総延長の42・5%が不適合とみられている。また適合、不適合にかかわらず、ひび割れ、ぐらつき、傾きなどの劣化がみられた塀は322校で954カ所に上った。早急に安全対策を進める必要がある。
 調査は大阪府北部地震で小学校のブロック塀の下敷きになって児童が死亡したことを受け、県教育委員会が実施した。不適合とみられる塀は高さ2・2メートルを超えていたり、塀の本体に直角で設置する控え壁がなかったりしていた。
 建築基準法施行令では、塀の高さは2・2メートル以下、厚さは10~15センチ以上とし、塀の長さ3・4メートル以下ごとに控え壁の設置も定めている。2・2メートルの高さ制限は1981年の施行令改正で規定された。改正のきっかけとなったのが78年6月の宮城県沖地震だった。犠牲者28人のうち18人がブロック塀などの倒壊で死亡したためだ。
 01年の施行令改正で2・2メートルを超えても構造計算で安全性を確認できれば建築可能になっている。また81年の改正前に設置された塀の場合は既存不適格建築物とされ、違法建築物とはみなされない。
 全国各地の調査では、高さ3・5メートルだったり、塀を継ぎ足して設置したりした危険な塀も確認されている。教育委員会の担当者の中には「違反との認識がなかった」と話す人もおり、関連法令などの知識が現場で共有されていないことをうかがわせた。
 いずれにしても、今回の目視調査で不適合の可能性があると判断された塀と劣化がみられた塀については、建築士など専門家による詳細な調査を実施する必要がある。重要な基礎の構造や内部に鉄筋が入っているかなどを調べ、倒壊の恐れがある塀は取り壊すなどの対応を取るべきだ。
 これまで学校の耐震化対策は校舎などの建物が中心だった。ブロック塀の耐震化については、あまり目が向かなかったのが現状だ。しかし大阪北部地震で児童が犠牲になったことで、人命を奪う危険な“凶器”が町中にあふれていることを再認識した。
 学校だけではない。一般住宅など民間の建物の周囲にもブロック塀は設置されている。国土交通省は塀の高さや厚さ、コンクリートの基礎の有無など点検のチェックポイントを公表している。危険が確認された場合は補修や撤去を求めている。塀の所有者は安全確認を進めてほしい。
 学校は児童、生徒の心身の発達を育む場所だ。尊い命を奪う場にしてはならない。詳細な調査を進め、危険だと判断されたら、直ちに公表すべきだ。早期に補修や撤去を進め、児童、生徒、住民の安全確保に努めたい。