<社説>辺野古に新たな柵 表現の自由を保障せよ


社会
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 市民の抗議活動を抑えようという狙いは明白だ。だが、抗議活動は憲法で認められた正当な権利である。政府は市民が表現の自由を行使できるよう十分に保障すべきだ。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設問題で、沖縄防衛局が深夜に、米軍キャンプ・シュワブの工事車両用ゲート前に新たな柵を設置した。
 高さ3~4メートルの既存の柵を車道側に張り出し、全長は40メートルに及ぶ。歩行者用の通路は確保しているが、座り込みができるスペースがほとんどなくなった。
 設置作業は3連休前の深夜に実施された。市民の目が届きにくい時間帯で、夜陰に乗じた行為と言える。
 国家機関が日中に堂々と作業できないのは、抗議活動を恐れているだけではなく、新基地建設が民意に背いたものだという後ろめたさを自覚しているからだろう。
 抗議活動の裏をかく沖縄防衛局の卑怯(ひきょう)なやり方は、何度も見せつけられてきた。
 2011年の年末には、仕事納めの日の午前4時に環境影響評価書を県庁の守衛室に運び込んだ。13年3月の埋め立て申請は、県北部土木事務所の別の課に書類を置いて去った。14年7月のシュワブへの資材搬入は午前2時すぎ、トラック42台での不意打ちだった。15年1月にも仮設桟橋用資材を夜間に運び込んだ。
 不意を突き県民を出し抜く手法は沖縄防衛局の常とう手段になっている。国家として恥ずべき行為だ。
 今回の柵設置は、8月17日の土砂投入に向けて、政府が焦っている表れだろう。
 琉球新報が昨年9月に実施した世論調査では80%が普天間飛行場の県内移設に反対している。民意を無視した政府の新基地建設強行は到底許されるものではない。
 抗議活動は憲法21条に保障された表現の自由の行使である。ビラや集会、デモ行進、座り込みといった一切の言論・表現の自由を、憲法は前提条件なしに保障している。市民が異議を申し立てる最低限の政治手法でもある。非暴力である以上、規制されるべきではない。
 国際基準でも同様だ。国際人権規約の21条は「平和的な集会の権利は認められる」とし、他者の権利や自由の保護のために必要なものを除いて、いかなる制限も課すことができない、と定めている。
 国連人権理事会は市民の抗議活動を制限する際のガイドラインを定めている。座り込みなどによる「救急車の通行や経済が深刻に阻害される場合以外の交通の阻害」「渋滞や商業活動への損害」などは許容されなければならない、としている。
 新基地への抗議活動に対する安倍政権の強権的手法は、国際基準からも逸脱している。民主主義国家なら、政治的意見の表明は保障されなければならない。抗議の声を押しつぶすことは許されない。