<社説>沖縄空手国際大会 継続を振興の力としたい


社会
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 世界50の国や地域の人々が海を越え、一様に道着に身を包んで「空手発祥の地」沖縄に集まった。その壮観で国際色豊かな光景に身震いするほどの感動を覚える。

 第1回沖縄空手国際大会が沖縄空手会館と県立武道館を会場に開幕した。約3500人の空手競技者・愛好家が参加する県内最大規模の大会だ。
 世界に誇る沖縄の伝統武術をさらに発展させ、国内外に発信させる好機である。一過性のイベントに終わらせず、次回大会の開催も見据え、「発祥」かつ「殿堂」の地になるよう戦略を立てたい。
 今大会の特徴は「型」を中心とした沖縄伝統空手・古武道を広く伝えることにある。
 空手道は組手を行う競技空手を含め世界に広がっている。競技者・愛好者はいまや1億3千万人とも言われるほどである。
 一方、県外・海外では伝統空手の「型」が正しく継承されていないと指摘されている。今大会は競技大会に1200人、主に伝統空手・古武道を学ぶ40のセミナーに延べ2300人が参加する。各流派の範士や教士によるセミナーは、沖縄で先人たちが体系化し、伝承してきた伝統空手・古武道を伝える機会となる。
 「空手に先手なし」「人に打たれず、人打たず、事なきをもととするなり」。沖縄空手の極意とも言える言葉だ。平和と守礼の心を重んずる沖縄の精神性が映し出されている。攻撃をせず、心身の鍛練を通して護身の技と高度な精神性を培うことが重要とされる。
 「降りかかる火の粉を払う。戦わずして勝つ」という沖縄伝統空手の精神性が広がれば、世界平和にもつながる可能性がある。伝統空手を中心にユネスコの世界無形文化遺産への登録へ向けた取り組みも進められているが、その精神性は世界の手本となるべきものとなるだろう。
 中学校体育で武道が必修化され、空手道は県内の中学校1年生で8割の学校で取り組まれている。
 2020年の東京五輪・パラリンピックでは正式種目になった。世界選手権で2連覇した県出身の喜友名諒選手らの活躍も期待され、競技人口はさらに増すとみられる。
 一方で課題も多い。今年、県が策定した「沖縄空手振興ビジョン」では「空手の価値が経済的に確立されていない」など空手による産業振興が未成熟であることや組織体制の弱さを挙げている。世界中から発祥の地を目指し来県する熱意を、沖縄空手が生業(なりわい)となる環境の醸成につなげなければならない。
 県によると、次回大会は未定とのことだが、第1回大会の盛会を見れば、継続が空手振興の大きな力となることは間違いない。大会を契機に、世界の空手愛好家が交流し、沖縄空手の神髄を学ぶ「聖地」づくりに取り組みたい。