<社説>東京医大得点操作 女性差別は許されない


社会
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 東京医科大学が医学部医学科の一般入試で女子受験者の点数を一律に減点していた疑いが浮上した。それによって、女子の合格者を全体の3割前後に抑えていたという。性別を理由に門戸を狭めることは女性差別以外の何物でもない。実態を明らかにし、是正すべきだ。

 同大の男女別合格率を見ると、2010年度は男子が8・6%、女子が10・2%だった。11年度以降、男女の合格率が逆転しており、18年度は男子8・8%、女子2・9%となっている。10年度に4割近かった合格者に占める女子の割合が18年度には2割弱まで下がった。得点操作の疑惑とも合致する。
 系列病院などで医師不足を来さないように、男性の医師を確保したいという思惑が働いたとみられる。女性は出産や子育てのため離職するケースが多いからだ。
 法の下の平等を定める憲法14条は「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と明記し、不合理な差別的取り扱いを禁じている。
 もとより、東京医科大の募集要項には男女別の定員などは記載されていない。公正な選考を装いながら、秘密裏に女子の受験生だけに高いハードルを課すことは憲法の理念にも反する。
 チャンスは、男女の別なく平等に与えられなければならない。事前に男子優遇を明示していたとしても、男女共同参画社会の形成に逆行する運営方針として、批判を浴びたに違いない。
 人の命を救いたいという純粋な思いから医師を目指しても、女性というだけでハンディを背負わされる。その結果、本当なら合格していたはずの女子が不合格となり、不合格だったはずの男子が合格する。このような理不尽が許されていいわけがない。
 医師不足を解消したいのなら、何をおいても、女性の離職を食い止める方策を実行すべきであり、問題解決の方向性が間違っている。働き方改革こそ急務だ。医療現場で女性の医師が伸び伸びと活躍できる環境を整えたい。
 東京医科大の校是は「正義・友愛・奉仕」だ。疑惑が事実だとすると、水面下での得点操作は正義にもとる。女子への差別は友愛とは正反対の行為だ。
 東京医科大では、入試不正を巡る汚職事件で前理事長らが贈賄罪に問われ在宅起訴されている。弁護士による内部調査の過程で得点操作を把握したようだ。
 過去には、点数を操作して合格させる受験生のリストが作成されていたという。不祥事を機に、学内のうみを全て出し切ってもらいたい。
 文部科学省は得点操作について報告を求める考えだが、「性別による優遇は他の大学でもあるのではないか」との声も出ている。同様の事例がないか、調査すべきだ。