<社説>路上寝7千件超 いまや深刻な社会問題だ


社会
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 危険な路上寝をする人がなぜ後を絶たないのだろうか。昨年、沖縄県警への通報は2年連続で7千件を超え、3人が死亡、12人が重軽傷を負った。今年も上半期だけで3015件と昨年を上回り、既に2人が命を落としている。命に関わる深刻な社会問題と位置付け、県民挙げて一掃に乗り出す段階に来ている。

 2017年の警察への通報件数7016件は、1日当たりにすると19件である。警察官2人がかりで保護手続きまで約2時間を要するという。当然、他の警察業務に支障が出ている。
 路上寝がいかに危険であるかは説明の必要もないだろう。夜間、道路に横たわっていたら、ドライバーが気付かないことは十分あり得る。財布を抜き取られたりする窃盗被害も多発しており、今年6月末までの那覇署の認知件数は30件に上る。路上寝が犯罪を誘発している。
 各警察署は以前から、路上寝をしている人の衣服にカードを挟む、路上寝をしている様子を写真に撮って「イエローカード」を渡すなど、さまざまな取り組みをしてきた。与那原署は7月から通報者や目撃者に状況を尋ねるアンケート調査を始めた。「夜中に怖い」「駐車場でひきそうになった」などの回答があり、路上寝している女性が性的被害に遭わないか心配する声もあったという。
 路上寝を見つけた場合、警察官が来るまで安全を確保して見守るよう与那原署は呼び掛けている。さらに常習者には、アルコール依存症の診断を促すほか、悪質とみた場合は道路交通法違反で摘発することも検討中だ。
 これだけ件数が多く、しかも増加傾向にあることを考えると、警察の対応だけでは限界がある。路上寝防止条例の制定を自治体に要請する動きも出ており、危機感は広がっている。
 6月には浦添市議会、石垣市議会で相次いで決議が上がった。浦添市議会の「路上寝防止対策および適正飲酒に関する決議」は、交通事故誘発、窃盗被害のほか、観光客に不快な思いを抱かせるという点も指摘した。石垣市議会の「路上寝込み防止宣言決議」も「観光地としてのイメージ低下、青少年教育への悪影響、交通事故や犯罪の誘因となる」と訴えた。
 路上寝の直接の原因は過度の飲酒にある。正体をなくすほどの飲み方は絶対にやめてもらいたい。しかし、沖縄が飲酒に寛容な社会だと指摘されてきたことを踏まえれば、個人の酒癖の問題に矮小(わいしょう)化できない。一緒に飲酒する仲間や飲食店の対応も問われるべきである。泥酔した状態で路上に放り出すような無責任は許されない。
 県警は県民総ぐるみの「適正飲酒」推進が重要と指摘している。路上寝に社会の関心を喚起するとともに、飲酒問題にどう向き合うのか、改めて一人一人が考えるべきだ。