<社説>東京医大入試不正 得点調整は1校だけか

 東京医科大の一般入試で女子受験者の点数を一律に減点していた問題は、組織ぐるみの裏口入学疑惑へと発展した。一部の受験生に点数を加えて合格者を不正に調整していたことを、弁護士3人で構成する内部調査委員会が認定したのである。

 報告書によると、400点満点の1次試験で、2017年度は13人に45~8点、18年度は6人に49~10点を加点している。
 入試委員会に採点結果を提出する前の段階で、リストに基づき不正加算した成績表を作成していた。得点調整が明るみに出るのを恐れたためだ。同窓生の子弟を増やすよう同窓会から圧力があったことも一因とされる。
 依頼された受験生が合格した場合、大学に寄付金を納めてもらうだけでなく、前理事長、前学長が個人的に謝礼を受け取ることもあったようだ。大学のトップを窓口として裏口入学が行われていたことになる。
 2次試験の小論文(100点満点)では少なくとも06年の入試から、現役、浪人、男女の属性による得点調整が繰り返された。18年度は全員に0・8の係数をかけたうえで、現役、1浪、2浪の男子に20点、3浪の男子に10点を加点している。女子と4浪の男子に加点はない。
 報告書は、性別を理由とする得点調整を「女性差別以外の何物でもない」と指弾し、受験生に知らせないまま受験回数の少ない人を優遇した措置を「受験生に対する背信行為」と断罪した。
 受験生が「試験の公平性を損なう行為」をすれば成績が全て無効になると募集要項でうたいながら、理事長や学長は不正を働いていた。内部調査委が指摘する通り「大学の自殺行為」にほかならない。
 本当なら合格していたはずなのに不合格とされ、医師への道をあきらめた人がいたかもしれない。人生設計を狂わせた罪は大きい。
 東京医科大は、得点調整で不合格にした受験生に謝罪し、希望があれば速やかに追加合格させるべきだ。彼らが被った損害についても補償が必要になるだろう。
 医師は、高い倫理観と使命感が求められる崇高な職業だ。人の命をあずかる責任の重さから「聖職」と呼ぶ人もいる。
 医学部の入試は医師になるための最初の関門である。不正な加点は、医師という職業に「裏口」を設けるに等しい。それによって資質に乏しい医師が量産されるなら、日本全体の医療水準を低下させかねない。
 文部科学省は全国の国公私立大医学部医学科を対象に、入試の公正な実施に関する調査を始めた。男女別、年齢別の合格率を報告させ、大きな開きがあれば理由を示すよう求めている。得点調整は東京医科大だけなのか。他の大学にもあるのなら、根絶しなければならない。