<社説>スポーツ界の不祥事 旧態依然の体質、改善を


社会
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 不祥事が相次ぐスポーツ界で、また新たに居合道での不正行為が発覚した。レスリングのパワーハラスメント、アメリカンフットボールの悪質タックル、ボクシングの不正疑惑に次ぐ不祥事だ。

 スポーツ界にはびこるうみを出し切り、絶対服従の古い体質を改善しなければならない。2020年の東京五輪に向けて、健全な組織づくりが急がれる。
 全日本剣道連盟は、居合道の昇段審査で、審査員らに現金を渡す行為が長年にわたり慣例化していたことを認めた。12年に受験者が審査員ら7人に計100万円を配っていたことや、16年に審査員に渡す約200万円を指導者に預けていたことを明らかにした。
 精神を尊ぶべき武道で悪弊が横行していたことは衝撃だ。他の競技にも広がってはいないか、スポーツ界は根深い問題を抱えている。
 レスリングでは、伊調馨選手に対して日本協会の栄和人強化本部長がパワハラ行為を繰り返していた。
 アメリカンフットボールでは、日本大の内田正人監督が選手に悪質な反則タックルを指示していた。
 ボクシングでは、日本連盟の山根明会長が助成金の流用や審判員への不正判定圧力、公式戦グローブの独占販売、暴力団組長との関係などの疑惑で批判を浴びた。
 いずれにも共通するのは、トップがリーダーシップをはき違えて独裁的に組織を運営し、強権支配で選手や関係者に物を言えない状況を強いている点だ。
 スポーツの世界では、指導者が絶対、上意下達という意識が強い。一連の不祥事が内部告発によって明るみに出たのは、その前近代的な体質に対する批判が高まっている証しと言えよう。
 鈴木大地スポーツ庁長官は「前々からあったこと。僕らも声を上げようという人が増えたのではないか」と語る。
 20年東京五輪を前に、スポーツ界の浄化作用の動きと見る有識者もいる。告発の連鎖で関心が高まっている今なら、声を上げることが改善につながるとの期待感だ。
 問題が表面化していない競技団体はまだあると思われる。五輪まで待たず、組織のうみは完全に出し切ってほしい。不祥事が発覚した団体も、トップが辞任すれば即解決とはいかない。内からの抜本的改革が不可欠だ。
 スポーツ界全体のコンプライアンス(法令順守)強化のためには、行政による環境整備も必要だ。
 不祥事などに対応できる第三者機関を、日本スポーツ振興センター(JSC)かスポーツ庁に設置することも検討していい。調査や指導に加え、選手の相談窓口や駆け込み寺の役割も持たせるべきだ。
 旧態依然の体質から早く脱却し、選手が自らの力を存分に発揮できるようにするのが競技団体の役割だ。大事なのは選手第一主義である。