<社説>知事選一騎打ちへ 正々堂々正面から論戦を


社会
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 翁長雄志知事が8日に死去したことにより9月30日に実施される県知事選は、県政与党などが擁立する衆院議員・玉城デニー氏(58)と自民などが推す前宜野湾市長・佐喜真淳氏(54)による事実上の一騎打ちになる見通しとなった。50代同士の知事選は県内では初めてであり、世代交代を印象付ける。

 今回の知事選は、現職の死去という沖縄で前例のない事態を受けて実施される超短期決戦だ。有権者は短い期間で判断を迫られるが、これからの沖縄の針路を大きく左右する極めて重要な選挙である。自身の生活に関わる選択の機会であることを認識し、候補者の訴えを注視したい。
 9月13日の告示を前に、9日には、辺野古で新基地建設が進む名護市を含め26市町村で議会議員選挙が実施される。統一地方選最大のヤマ場だ。宜野湾市長選も30日に投開票される。知事選の論戦は身近な地域の課題を託す地方選挙とも重なる。
 全国が今知事選を注目している。辺野古の新基地建設問題に加え、各党が来年の参院選を占う重要選挙と位置付けているからだ。
 知事選の最大の争点は前回と同様、辺野古新基地建設の是非となる。ただ、4年前と状況は異なる。辺野古沖の埋め立てに向けた護岸整備が進み、現場は緊迫している。政府は土砂投入を、県は埋め立て承認撤回を、どの時期に実行するか、互いの腹を探る神経戦を繰り広げている。
 新基地建設の根拠の一つとされてきた北朝鮮情勢も大きく変わった。翁長知事は埋め立て承認撤回を表明した会見で、朝鮮半島の非核化に向けた米朝対話が進んでいることを挙げ、20年以上も前に決定された建設計画を見直さず強引に推し進める政府の姿勢は「到底容認できない」と批判した。情勢の変化がどう影響するかも注目点だ。
 辺野古新基地問題について、玉城氏は建設阻止の姿勢だ。佐喜真氏は政策発表の段階で態度を明らかにするという。両候補は姿勢を鮮明にし、正面から堂々と論戦を戦わせてほしい。
 他にも県政の課題は山積している。第5次沖縄振興計画に当たる「21世紀ビジョン基本計画」は10年計画を折り返し、日本復帰50年以降の振興を見据えた議論が始まっている。沖縄の自立をどう展望するか、候補者の構想力が問われる。全国平均の2倍に上る子どもの貧困率や全国最悪水準の失業率、全国で最も割合が高い非正規労働者の問題も解決の道筋を示してほしい。基幹産業である観光の振興・発展や医療・福祉、教育への取り組みも注目される。
 今知事選は、革新系と一部保守系が組む勢力と、自民、公明などの勢力がぶつかり合う構図になる。
 沖縄の将来を担う、県政のかじ取り役を選ぶ選挙だ。有権者は候補者の政策を見比べ、論戦に耳を傾けてほしい。