<社説>米中貿易摩擦 報復やめて協調模索を

 大国同士の関税引き上げの応酬が、世界の自由貿易体制を脅かす事態になっている。

 米国と中国は互いの製品に25%の追加関税を課す制裁の第2弾に踏み切った。第1弾と合わせると、対象はそれぞれ計500億ドル(約5兆5千億円)に相当する。米国は半導体やフッ素樹脂などを関税対象に加えた。これに対し中国は自動車や大豆など米国の主要産品を関税対象に選び、双方の争いは泥沼化している。
 米中は経済規模世界1、2位の責任を自覚し、報復合戦のような関税引き上げをやめるべきだ。
 先にカードを切ったのはトランプ米大統領だ。ことし6月15日、トランプ氏は知的財産権侵害を理由として中国製品に追加関税を課すと発表した。
 翌日には逆に中国が米国製品に制裁関税を課すと発表した。トランプ氏は9月にも第3弾として服飾品や農水産品など幅広い中国製品の制裁を検討している。
 11月に中間選挙を控えるトランプ氏が国内向けに強硬姿勢を取っているとの推測も広がる。しかし、現実には放った矢が自国経済をも傷つける事態も起きている。アルミ缶のコスト増に直面したコカ・コーラは卸売価格の引き上げを表明した。米国車は中国市場の販売が落ち込んだ。
 中国には米日欧の工場が集積する。グローバル化の中で米中の経済は密接に絡み、中国の製品が値上げされれば、米国経済を支えている個人消費に打撃を与える。
 問題はトランプ氏の「米国第一」を掲げた保護主義政策が各国に連鎖すれば、世界の自由貿易体制を根底から揺るがすことだ。
 米国は中国だけでなく、日本を含め多くの国からの輸入品にも関税引き上げを連発している。鉄鋼やアルミニウムの輸入制限では、親密な関係を築いてきたはずの安倍晋三首相の要請に対しても、適用除外はしなかった。
 米中の対立をきっかけに世界経済が悪化すれば、各国に保護主義が一気に広がる可能性は否定できない。
 米国が指摘する中国の知的財産権の侵害は、日本や欧州も懸念を示してきた。中国は進出する外国企業に技術移転を強要したり、国内企業に不当な補助金を拠出したりした。中国は国際ルールに従わなくてはならない。
 米国は、貿易でもめた場合は世界貿易機関(WTO)のルールに沿って解決を図ることだ。保護主義は結果的には国内産業の競争力を弱め、ひいては米国の国力を低下させる。
 国際社会は保護主義の台頭が第2次世界大戦につながった苦い歴史を背負う。1930年代、各国は世界大恐慌を自国産業の保護で乗り越えようとし、それが対立を生んだ。
 日本も経済大国として、自由貿易体制の維持に責任がある。世界各国と協調し、米国へ保護主義の是正を促すべきだ。