<社説>小中耐震化率最低 児童生徒の安全最優先に


社会
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 県内の公立小中学校の校舎や体育館など1597棟のうち138棟(24市町村)が震度6強の地震への耐震性がないことが文部科学省の調査で明らかになった。耐震化率は91・4%で全国最低だ。6強以上の地震で倒壊する危険性が高い建物が19棟ある。

 各自治体は児童・生徒の安全の確保を最優先し、耐震改修を急ぐべきだ。大規模な地震が起きてからでは取り返しがつかない。
 耐震化が遅れている理由について県内の市町村からは「学校数が多く事業の平準化を図り耐震化を進めてきた」「改築予定のため工事費が高額になり、予算が確保できない」「学校統廃合も見据えた方針の決定に時間を要している」などの回答があった。
 11市町村は2020年度までに耐震化を済ませる計画だが、13市町村は完了時期について21年度以降または未定と答えている。悠長な印象は否めない。
 一方で「以前は地震への危機意識が低かった」と率直に認める自治体もある。沖縄で大きな地震は起きないだろうという誤ったイメージが、取り組みの遅れを許す一因になってはいないか。
 政府の地震調査委員会が公表した全国地震動予測地図18年版によると、沖縄で強い揺れの地震が起きる確率は決して低くはない。近代以降、石垣が崩れるなどの被害が出た地震は10回以上を数える。震度6を超える地震が起きても少しも不思議ではない。
 各市町村は、いずれ大規模な地震が発生するという前提で、あらゆる対策を講じなければならない。職員の間に危機意識が乏しいのなら、研修等で抜本的な意識改革を図る必要がある。
 全国の耐震化率は99・2%で、秋田など12府県で100%を達成した。この差はどこから来ているのか。
 他県は安価な補強工事で耐震化ができるが、塩害で建物の劣化の早い沖縄では改築工事で対応してきた点が、背景として指摘されている。
 だからと言って、子どもたちの安全をおろそかにしていい理由にはならない。
 未耐震の建物は全国に978棟ある。このうち14%が沖縄に集中している計算だ。とりわけ那覇市は未耐震の建物が45棟に上り、14棟は6強以上の地震で倒壊の危険性が高い建物とされる。
 震度6強の地震が起きれば、立っていることができず、はわないと動けない状況に陥る。その中で建物が倒れたらどうなるだろうか。
 本来、学校の施設は最も安全な場所でなければならない。公立学校の多くは災害時の避難所に指定されている。地域の防災拠点としての役割も重要だ。
 耐震化率を100%にすれば、児童・生徒や教師の生命を守るだけでなく、防災機能の強化にも結び付く。耐震改修を急がなければならないことは自明の理だ。