<社説>知事選と普天間移設 態度を明確にして論戦を


社会
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 翁長雄志知事の死去に伴う県知事選は前宜野湾市長・佐喜真淳氏(54)=自民、公明、維新推薦=と衆院議員・玉城デニー氏(58)の新人2人による事実上の一騎打ちとなる。最大の争点は、米軍普天間飛行場の移設に伴う新基地建設の是非である。

 玉城氏は8月29日の出馬表明の際、「翁長知事の遺志である埋め立て承認撤回を全面的に支持していく。辺野古新基地建設阻止を貫徹する」と述べた。
 佐喜真氏は3日の公約発表で「最も重要なのは普天間の固定化を避けることだ。返還までの基地負担の軽減と危険性の除去を県民に訴えたい」と述べた。
 玉城氏が建設阻止を強調したのに対し、佐喜真氏は新基地建設の是非について触れなかった。
 その理由について佐喜真氏は、県の埋め立て承認撤回を受けて政府が法的措置を検討していることを挙げ「法律的にどうなるか注視しなければいけない」と説明した。
 一方の玉城氏は「翁長知事は『あらゆる手段を尽くして辺野古新基地建設を止める』と言っていた。その方向性は1ミリもぶれることはない」と明言している。
 県は仲井真弘多前知事による埋め立て承認を8月31日に撤回した。誰が知事になるにせよ、就任してすぐにこの問題に直面する。沖縄防衛局による辺野古海域への土砂投入が迫っているからだ。
 選挙戦を目前に控えた段階になっても賛否を明確にしないのは、沖縄のリーダーを目指す者の態度としては、無責任ではないのか。
 沖縄が他府県と際だって異なるのは、国土の0・6%しかない小さな県土に全国の米軍専用施設面積の7割が集中していることだ。今も沖縄本島の約15%を米軍基地が占めている。
 おびただしい数の住民を巻き込んだ悲惨な地上戦の後、米軍が銃剣とブルドーザーによって土地を奪い、広大な基地建設を強行した。決して住民が望んだ結果ではない。
 だからこそ、歴代の県知事は過重な基地負担に頭を悩ませ、解決に向けて腐心してきた。過去の知事選を振り返っても、その時々で争点になった、基地を巡る課題に対し、主要候補のほとんどが定見を明らかにしている。
 今回の知事選は安倍政権を中心とする勢力と県政与党を中心とする勢力が激しくぶつかり合う構図だ。新基地建設を推進する安倍政権は佐喜真氏を支援し、阻止を目指す県政与党は玉城氏を支援する。
 その構図の中で、玉城氏の姿勢ははっきりしているが、佐喜真氏はどうなのか。政府与党の支援を受けた渡具知武豊名護市長のように最後まで是非について触れないのか。
 曖昧にしたままだと、有権者は判断に迷う。候補者は新基地建設問題で態度を明らかにし、正々堂々と真正面から論戦を展開すべきだ。