<社説>北海道地震 人命救助と電力復旧急げ


社会
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 北海道で6日未明に震度7の地震が起き、厚真町やむかわ町などで大規模な土砂崩れや家屋倒壊が発生した。多数の死傷者が出て、30人近くが安否不明という。

 政府は安否が分からなくなっている人たちの救出を全力で支援するとともに、電力などライフラインの復旧のためあらゆる手だてを講じるべきだ。
 北海道地方は7日以降も断続的に雨が降るとの予報だ。雨が降れば、地震によって地盤が緩んでいる場所で土砂崩れの連鎖が起きかねない。
 今回の地震は内陸の活断層がずれて起きた可能性を専門家は指摘する。断層が短い時間に連続してずれたため強い揺れが長くなり、土砂崩れを引き起こしたのではないかという。
 北海道では前日までに台風21号や前線の影響で雨が降った。土砂崩れがあった厚真町や安平町では雨量は13ミリ程度とそれほど大雨ではなかったと言われている。しかし、揺れの大きな地震が直下、直近というところで起きれば土砂崩れはどこでも起きる恐れがある。複合的災害との指摘もある。
 北海道地震で、深刻な被害を生んでいるのは道内全域にわたる停電だ。地震発生後、道内全ての火力発電所が停止し、全295万戸が停電するという異常事態となった。2011年3月の東日本大震災時の東北地方でも全域の停電は発生しなかった。
 札幌市内の病院では0歳児の酸素吸入器が止まり、重症となった。ほかにも病院249カ所が停電している。新千歳空港は閉鎖し、鉄道も復旧の見通しは立たず、交通網はマヒしたままだ。
 6日午後に停止していた火力発電所のうち、砂川発電所が稼働したが、政府は道全域の電力復旧には少なくとも1週間はかかるとみている。経済産業省は全域停電について、北海道電力が同社最大の火力、苫東厚真火力発電所が一斉停止する事態を想定していなかったことが一因との見方を示している。その「想定外」は防げなかったのか。
 北海道と本州をつなぐ送電線の容量は60万キロワットで、道内の電力需要を満たせる量はない。沖縄の場合はもっと深刻だ。沖縄電力によると沖縄には本州とつなぐ送電線自体がない。県内の発電所が全て止まれば、電力供給が失われ、命にも関わる事態になる。市民生活への打撃も計り知れない。
 今年は西日本豪雨や相次ぐ台風襲来など自然災害が多発している。4日には台風21号の影響で関西空港が浸水して
8千人もの人が取り残された。
 私たちは、災害に対して時に脆弱(ぜいじゃく)なインフラ機能の上に生活していることを自覚しなければならない。
 その上で備えが必要だ。いざという時どう行動するかを改めて確認しなければならない。災害列島日本で暮らす自戒を忘れてはならない。