<社説>池宮城秀意記念賞 世界に沖縄の今伝えよう


社会
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 琉球新報社は2018年の「琉球新報池宮城秀意記念賞」に、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対を訴え、発表された「海外識者103人声明」を選定、15日に贈呈した。

 声明への賛同者を募る活動で1万5千人の署名も集めており、沖縄の問題を世界に知らしめた。同賞にふさわしい活動と功績をたたえたい。
 池宮城秀意記念賞は2008年9月15日の創刊115年を記念して創設された。国籍を問わず国外を活動の拠点とし、ジャーナリスト活動や研究活動などを通して「沖縄問題」を広く世界に知らしめ、その打開のために貢献している個人や団体に贈られる。
 5年ごとに表彰し、第1回の08年受賞はインターネットで沖縄問題に関する日本語の記事や論文を英語で世界に発信している「アジア太平洋ジャーナルジャパンフォーカス」だ。13年は内定したが、授与に至らなかった。
 「海外識者103人声明」は当初、14年1月に言語学者のノーム・チョムスキー氏、アカデミー賞受賞の映画監督オリバー・ストーン氏ら29人が呼び掛け人となって声明を発表したのが始まりだ。1カ月前の前知事の辺野古埋め立て承認を「県民の苦しみを恒久化させる裏切り」と批判し、沖縄での新基地建設に反対し、普天間飛行場の即時返還を求める姿勢を明確にした。
 声明は瞬く間に広がった。「平和研究の父」とされる政治学者ヨハン・ガルトゥング氏ら著名な識者らが次々と賛同し、日本国憲法の条文数と同じ103人が名を連ねるまで拡大したのだ。
 こうした動きは沖縄の人々を勇気づけた。世界の良心が沖縄に目を注ぎ、決して孤立していないことを示したからだ。その後も声明を重ね、今月には4回目となる声明を発表した。新基地建設を即座に中止し、沖縄を非軍事化するよう求めており、4年前を上回る133人が名を連ねた。
 賞に名を冠している池宮城秀意は戦後の米統治時代から本土復帰後にかけて琉球新報の編集局長、社長などを務め、沖縄世論をリードしてきた。沖縄が置かれた差別的状況に憤り、広い視野から解決を訴えた。戦時中は反戦を訴え、治安維持法違反容疑で逮捕され、投獄されたこともある。常に反権力の立場に立ち続けた反骨のジャーナリストだ。
 15日の贈呈式で、アメリカン大学教授のピーター・カズニック氏は「沖縄の皆さんは軍事主義と闘う世界の人たちに勇気を与えている。この賞は皆さんと一緒に受けた賞だ」と述べた。詩人で小説家のジョイ・コガワ氏は「受賞を機に沖縄の物語がさらに世界に広がっていくと信じる」と語った。
 辺野古新基地建設など、沖縄は現在も厳しい状況に直面している。問題を打破するためには、この賞が目指す世界に知らしめる取り組みを繰り返すしかない。決して孤立せず、あきらめることなく。