<社説>中国軍尖閣衝突回避 紛争より平和の拠点に

 中国人民解放軍海軍の将校が昨年4月、軍の内部雑誌の論文で、尖閣諸島を巡る軍事衝突を極力回避すべきだとの考えを示していた。日中間の緊張を高めている尖閣問題で、中国軍内部から冷静な対応を求める主張が出ていることを歓迎したい。

 将校は論文で「尖閣諸島を含む東シナ海で日中の海洋権益のせめぎ合いは激烈で、海上での軍事危機発生の可能性は増大する」と分析する。その上で「海上軍事危機が起きれば、わが国の平和発展プロセスの重大な障害となる」「日中の連絡ルート確立やハイレベル交流、軍事交流などにより、危機の発生率を下げられる」と指摘し、軍事衝突を回避するよう提言している。極めて理性的だ。
 尖閣諸島の領有権問題が再燃したのは、2012年に当時の石原慎太郎東京都知事が尖閣諸島の土地購入構想を打ち出したのが発端だ。対中強硬姿勢の石原知事率いる東京都が土地を購入すれば、武力衝突に発展しかねないとして、当時の民主党政権が魚釣島など3島を国有化した。
 これに対して中国は直ちに抗議し、日中関係は政治だけでなく、貿易や民間交流を含め、多方面で悪化し「政凍経冷」と形容されるほど冷え切った。中国軍は12年12月に尖閣付近で初めて領空侵犯をした。その後も中国海軍の軍艦が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用レーダーを照射したりするなど、軍事的な緊張関係が高まっていった。
 尖閣諸島を抱える沖縄にとって看過できない状況だ。国内で唯一、おびただしい数の住民を巻き込んだ地上戦を経験した沖縄県民の多くは軍事衝突ではなく平和的解決を望んでいる。
 将校が論文で提言している通り、今年に入ってから日中間で緊張緩和のための取り組みが動きだしている。今年5月、自衛隊と中国軍が偶発的に衝突する不測の事態を避けるため、防衛当局間の相互通報体制「海空連絡メカニズム」の運用が始まった。不測の事態を回避する仕組みだ。
 今月21日には自衛隊と中国軍の佐官級交流事業の一環で、自衛隊の代表団が訪中した。尖閣国有化で中断していた事業が再開され、約6年半ぶりに日本側代表団が訪中した。こうした交流を重ねることで、相互不信を取り除くことが必要だ。
 今月12日には安倍晋三首相が中国の習近平国家主席と会談した。安倍首相は「日中関係を新たな段階に押し上げたい」と述べ、習主席も「日中関係は正常な軌道に入っている」と述べ、関係改善に取り組む姿勢を示した。
 その上で尖閣諸島を含む東シナ海を「平和、協力、友好の海」とするよう共に努力することを確認した。必ず実行してほしい。尖閣は沖縄の人々にとって、琉球の時代から生活圏だった。日中の紛争の火だねになるのではなく、平和と友好の拠点にしたい。