<社説>台風で長時間停電 復旧情報 丁寧な広報を


社会
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 台風24号によって起きた広範囲の停電は、台風通過から3日を経て地域単位ではほぼ復旧した。最大25万戸が停電し、多くの県民が不安な時を過ごした。電気は最も基本的なライフラインである。電力供給を担う沖縄電力は、復旧作業と併せ、作業の進捗(しんちょく)、復旧見通しについて丁寧な広報に努めてもらいたい。

 9月29日から10月1日にかけて沖縄電力のコールセンターは、電話をしても自動音声だけが流れるなど、オペレーターにつながりにくい状態になった。そのため琉球新報に不満を訴える電話が多くかかってきた。沖縄電力は取材に対して、回線の容量を超えて電話が殺到したためとし「大変ご迷惑をお掛けしていることをおわび申し上げます」とコメントした。
 同社ホームページでは「職員を総動員し、復旧に向けた作業を行っております。ご理解とご協力をお願い申し上げます」とのコメントを掲載し、市町村別に停電が起きている地域名と復旧見通しを大まかに示していた。
 しかし、パソコン、スマホのない人や、あっても停電で見られない人もいる。電話での対応を含め広報態勢を強化できないだろうか。
 沖縄電力は延べ1800人態勢で復旧作業に当たった。危険を伴う作業に懸命に取り組む人たちに敬意を表したい。その中で感電事故が起きた。回復を祈るとともに、復旧作業は安全第一で進めるよう求めたい。
 停電が長引く影響は大きい。電気製品が使えない不便はいうまでもなく、くみ上げるポンプが動かず水が出なくなる家庭が多い。水がなければ調理や入浴ができず、トイレも使えない。在宅で医療機器を使用している人たちにとっては命に関わる。
 学校も深刻な影響を受けた。10月1日は、給食センターで調理ができず給食を出せなかった学校が12市町村68小中学校に上った。トイレも使えないため休校とした学校も多かった。
 スーパーや飲食店では、冷凍・冷蔵庫で保存していた商品や食材が使えず廃棄せざるを得ないケースが続出している。台風が去った後に、停電による経済的被害が生じている。
 北海道地震では全域停電が起きた。離島県である沖縄にとって人ごとではない。台風や地震、豪雨などの自然災害に耐えられるよう、発電、送配電の設備やシステムの強靱(きょうじん)化が求められている。
 停電の原因として、風で飛んだ物が送電線を切ることがある。飛散防止対策の県民への啓発も課題である。
 一息つくいとまもなく台風25号が接近している。家庭や職場でいま一度、備えを確認したい。
 行政や地域は、停電になった時の避難も含め社会的弱者への支援態勢、観光客への対応などを改めて点検すべきである。