<社説>米軍属事件の刑確定 元凶は基地、抜本削減を

 若い女性の命も尊厳も奪った痛ましい事件の刑が確定した。今回の事件は日米地位協定の欠陥を改めて浮き彫りにした。米軍関係犯罪の元凶である米軍基地の在り方を解決しないことには、根本的な再発防止策にはならない。

 2016年4月に起きた米軍属女性暴行殺人事件で、殺人や強姦(ごうかん)致死などの罪に問われた元海兵隊員で事件当時軍属のケネス・フランクリン・シンザト(旧姓ガドソン)被告は、期限までに上告せず、無期懲役の判決が確定した。
 一審、二審判決とも、ケネス被告が被害者の頭部を殴ったり、首を絞めたりして、首付近をナイフで数回突き刺したとして、殺意を認めた。
 ケネス被告は公判で黙秘権を行使し、供述を拒んだ。反省の言葉や被害女性、遺族への謝罪はなかった。動機も本人の口からは語られず、「なぜ殺されたのか」という被害者の父親の疑問や無念さは晴らされなかった。不誠実な態度に終始したと言えよう。
 今回の事件では、米軍人・軍属に特権を与えている日米地位協定の構造的欠陥も改めて指摘された。
 刑事面では、被告が基地内で証拠隠滅を図った可能性があるにもかかわらず、立ち入り捜査ができなかった。
 民事面では、遺族補償の肩代わりを、被告の「間接雇用」を理由に米側が拒否した。
 軍属は、地位協定で直接雇用・間接雇用を問わず、裁判権などの特権が認められている。一方で、賠償責任については直接雇用と間接雇用で区別し、米側は補償対象外として支払いを免れようとした。
 米政府は、責任を取らない間接雇用の軍属にまで特権を与えていることになる。今回は政治的判断で見舞金が支払われるものの、極めてご都合主義であり、許されない。
 地位協定が米軍絡みの犯罪の温床になっているだけでなく、悲しみに沈む遺族にさらに苦痛の追い打ちを掛け続けている。地位協定を改定しなければ、元凶は絶てない。
 だが日本政府は及び腰だ。事件後に取った対策は、軍属範囲の縮小とパトロール隊設置という小手先に終わった。
 軍属範囲を狭めた補足協定を政府は「画期的」と自賛したが、根本解決ではない。事件事故を起こす圧倒的多数の米兵には何の効果もない。
 車両100台で夜間に見回りをする「沖縄・地域安全パトロール隊」に至っては、犯罪抑止効果が疑わしい。隊が17年度に県警に通報した年間474件のうち、米軍人・軍属関係は4件しかなかった。年間約8億7千万円の税金を投じるだけの費用対効果はあるのだろうか。
 そもそも、基地がなければ米軍関連の犯罪は起こらない。被害女性の父親が「基地があるがゆえに起こる」と指摘する通り、最善の再発防止策は基地撤去である。国策による犠牲はもう要らない。日米両政府は地位協定改定と基地の抜本的削減をするべきだ。