<社説>那覇市長選告示 候補は活発な論戦展開を


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 那覇市長選が14日告示される。21日の投開票に向け、本格的な選挙戦の火ぶたが切って落とされる。県都のかじ取りを選ぶ重要な選挙だ。候補者の政策を吟味し、今後の4年間を託せる人に1票を投じたい。

 那覇市長選は立候補を表明している現職の城間幹子氏(67)と前県議の翁長政俊氏(69)の一騎打ちとなる見通しだ。
 城間氏は認可保育園の拡大や給付型奨学金の創設、子どもの貧困対策など1期4年の実績を強調している。その上で2期目では現市民会館敷地への真和志支所複合施設建設に取り組む考えを示す。
 翁長氏は現市政の下で無料の妊婦歯科検診や2歳児歯科検診、がん検診などが廃止されたことを指摘する。那覇空港と那覇港周辺の産業拠点の開発構想を示し、那覇軍港の早期返還を求める考えだ。
 両氏は待機児童解消に向けた取り組みや子ども医療費助成の拡充では一致している。ただし個別の主張では違いが見られる。
 医療費無料化の対象年齢について、城間氏は「中学3年生まで」とし、翁長氏は「高校3年生まで」としている。教育施策でも城間氏は「全学年に電子黒板設置、学力向上を図る」と訴え、翁長氏は「教育無料クーポン導入、少人数学級推進」を掲げる。両氏とも財政の裏付けを有権者に説明する必要がある。
 生活困窮世帯への子どもたちへの支援について、城間氏は「無料塾、子ども食堂、給付型奨学金、基金増加」を示し、翁長氏は「子どもの居場所への支援と学習支援を拡充する」を示す。貧困の連鎖を断つ施策を進めたい。
 那覇市は深刻な交通渋滞に見舞われている。2012年度の調査では、那覇市内の朝夕混雑時間帯の走行速度が全国ワーストだった。
 城間氏は「公共交通の利用を促進し、LRT等の導入を検討」を挙げ、翁長氏は「モノレールの拡充や無料コミュニティーバス導入」を挙げる。渋滞を引き起こす自家用車の利用をどう抑制するかも示してほしい。
 経済振興でも両氏はそれぞれの施策を打ち出す。城間氏は「観光振興、中小企業支援、中心市街地活性化」を掲げ、翁長氏は「那覇空港・那覇港エリアを産業・物流拠点に」と位置付けた。市街地活性化と新たな産業を呼び込む具体策が知りたい。
 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設については城間氏が「県経済自立の阻害要因でしかない新たな米軍基地の建設に反対する」との立場で、翁長氏は「(県と国とで予想される)裁判闘争の行方をしっかりと注視していく」との立場だ。
 那覇市は県都であり、沖縄全体の課題を包含している。市民一人一人が自信を持って投票権を行使できるよう、両氏は健全で活発な論戦を展開してほしい。