<社説>玉城知事所信表明 横暴な政府に毅然と臨め


社会
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 玉城デニー知事が初めての県議会に臨み、所信を表明した。故・翁長雄志前知事の政策を引き継ぎつつ、知事選で訴えた独自政策も盛り込んだ。相手候補に投票した有権者の存在も意識して「県民の心を一つにする」姿勢を強調した。「145万県民の知事として責任の重さを痛感する」と冒頭に述べた通りに、公約実現に努めてほしい。

 知事選の最大の争点だった米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設問題について、玉城知事は「建白書の精神に基づき、辺野古の新基地建設に反対し、普天間飛行場の一日も早い閉鎖・返還を政府に強く求めていく」と述べた。
 しかし、翁長前県政発足時に比べて基地問題への言及は少なかった。基地の過重負担の歴史と現状、県の埋め立て承認撤回に触れなかった。民意を無視して強引に新基地建設を進めてきた政府に対峙(たいじ)するなら、翁長県政継承の姿勢をより明確にすべきではなかったか。
 玉城知事は当選直後から政府に対話を呼び掛け、12日に安倍晋三首相との会談が実現した。しかし、予想通り平行線だった。政府は法的対抗措置を準備している。対話による解決を粘り強く目指しつつも、横暴な政府には毅然(きぜん)とした姿勢で臨むべきだ。
 所信表明では日米地位協定の抜本的見直しを掲げ、米軍人軍属による事件・事故など基地から派生する諸問題にも「解決に全力で取り組む」と強調した。地位協定改定に全国知事会が動きだしている。その先頭に立って、早期に目に見える成果を上げてほしい。
 玉城知事は三つの視点を掲げた。「新時代沖縄の到来」「誇りある豊かさ」「沖縄らしい優しい社会の構築」である。
 沖縄21世紀ビジョン基本計画に基づき、アジアのダイナミズムに乗って沖縄振興を進める。政治的立場の違いを超えて基地問題の解決に取り組む。そして「誰一人取り残すことなく、全ての人の尊厳を守り、多様性や寛容性を大切にした共生の社会づくりを目指す」という理念だ。
 いずれも県民なら誰もが望んでいることである。子どもの貧困対策を最重要政策としたのも当然であろう。
 実施施策として15項目を挙げた。その中で「万国津梁会議」新設、「琉球歴史文化の日」制定、中高校生のバス通学無料化、犬猫の殺処分をなくすなど玉城カラーを打ち出した。どう具体化するか、丁寧な説明が求められる。
 大田昌秀知事以来、毎週1回の定例会見が慣例化してきた。これをぜひ引き継いでもらいたい。定例会見の場で疑問に答え説明を尽くすことで県政への信頼が醸成される。「誰一人取り残さない」ことも「立場の違いを超えて心を一つにする」ことも、透明な県政の中でこそ実現できるはずである。