<社説>空手道古武道功労賞 極みを目指す姿から学ぶ


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 沖縄が誇る空手道古武道の継承発展に尽くした功績をたたえ、第6回沖縄空手道古武道功労賞が19日、5氏に贈られた。いまや沖縄は空手発祥の地として世界に広く知られる。今年8月の第1回沖縄空手国際大会には、世界50の国や地域から延べ3500人が沖縄の地に集結した。

 5氏は鍛錬を重ねて自らを磨いただけでなく、沖縄伝統の空手道古武道の神髄を世界に伝えた。
 平良慶孝県空手道連盟会長は全日本空手道連盟公認審判員を務め、競技力の向上に貢献する。2020年東京オリンピックの空手競技決定にも関わった。
 八木明達沖縄空手・古武道連盟副会長は第1回の父・明徳氏に続く受賞だ。海外約30カ国に2万人以上の門下生を抱え、5年に1度は弟子が沖縄に集う。
 久場良男県空手道連合会副会長は、伝統の「手(てぃー、型)」を著作にまとめるなど空手の型の伝承に力を注ぎ、海外での指導も正しい型の継承に努める。
 佐久川政信全沖縄空手道連盟会長は、地域で後進の指導に当たるほか、欧州キャラバン隊隊長などを務めた。沖縄空手国際大会の開催にも尽力した。
 池宮城政明沖縄伝統空手道振興会事務局長は、沖縄の空手主要4団体でつくる同振興会の設立に奔走し、沖縄空手発展の礎を築いた。現在も実務を担う。
 5氏に共通するのは、「平和の武術」と言われる空手の発展の基礎をつくり、さらに国内外に広めた功績だ。
 2008年に沖縄の空手主要4団体で構成する沖縄伝統空手道振興会が発足した。流派や「型」の違いを超えて、「県内空手団体および空手の普及振興に賛同する者を網羅した組織」だ。
 発祥の地にふさわしい沖縄空手会館も開館した。
 2020年の東京五輪・パラリンピックで正式種目になったのも、積み重ねた努力の成果だろう。東京五輪では世界選手権で連覇した県出身の喜友名諒選手らの活躍も期待され、競技人口はさらに増すと思われる。
 功労賞は1993年、琉球新報が創刊100年を記念して創設した。以降、5年に1度贈られ、5氏を含め30人が受賞した。贈呈式で5氏は周囲の支えに感謝し、空手を伝承、発展させることを誓った。
 「降りかかる火の粉を払う。戦わずして勝つ」という沖縄伝統空手の精神性は世界平和につながる思想だ。伝統空手を中心にユネスコの世界無形文化遺産への登録へ向けた取り組みも進められているが、その精神性は世界の手本となるべきものだ。
 今後の5氏の活躍を期待したい。後進が育ち、沖縄の空手道古武道がますます発展することを願う。
 一本の道を歩み続け、極みを目指す。その姿勢に私たちも学びたい。