<社説>那覇市長選きょう投票 1票を県都託せる人に


社会
この記事を書いた人 琉球新報社

 那覇市長選がきょう21日に投開票される。任期中の2021年には市制施行100周年を迎える。歴史的節目となる県都の代表を選ぶ重要な選挙だ。多くの市民が貴い1票を投じてほしい。

 立候補しているのは無所属新人で前県議の翁長政俊氏(69)と2期目を目指す無所属現職の城間幹子氏(67)の2人だ。
 那覇市はさまざまな課題を抱える。待機児童問題はその一つだ。市内の認可保育園は2016年度の86園から18年度には141園まで増えた。このため保育定員は14年度の7163人から18年度には1万1405人まで増えた。
 その結果、待機児童数は全国3位、県内1位だった16年度の559人から18年度には138人まで減少した。ゼロには届かないものの、4年間で7割も減少した。大きな前進だろう。
 しかし急な増園によって保育士不足が深刻化している。18年度の不足数は75人だ。前年より21人増えた。「潜在保育士」に就職祝い金を支給する市独自の支援策を講じているが、さらなる保育士確保の取り組みを進めてほしい。
 待機児童が解消されていない一方で、新設園の中には定員割れが生じている。9月1日時点で市内全体で591人の定員割れとなっている。地域ごとの需要と供給が合わないミスマッチが生じていると言わざるを得ない。利用者の需要を正確に把握する必要がある。
 高齢者の健康問題も重要だ。「第7次なは高齢者プラン」によると、那覇市は介護が必要な高齢者の割合を表す要介護認定率が全国に比べて高い。特に生活全般に介護が必要となる「要介護3」以上の重度認定者の構成比が高い。重度化を防ぐため、介護予防や健康づくりの施策充実を求めたい。
 財政も喫緊の課題だ。歳出の中で生活保護費、福祉サービスなどに使われる「扶助費」の割合は35・56%(16年度)に上る。全国54の中核市の中で4番目に高い。歳入に占める地方税も年々増加しているが、扶助費の伸びに追い付いていない。福祉サービスを充実させながらも、歳入増につながる企業集積などを進めるべきだ。
 雇用にも目を向けたい。17年の就業構造基本調査によると、那覇市の労働者のうち正規雇用は56・6%、非正規雇用は43・4%だった。非正規割合の全国平均は37・3%で、市は6・1ポイント高い。労働者の処遇改善が急務だ。
 教育、医療、中心市街地活性化、交通渋滞なども重要課題だ。さらに米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題も県全体の大切な問題だ。県都の首長として正面から向き合う必要がある。
 これらの課題に2人がどう取り組むのか。選挙公報などで翁長、城間両候補が掲げる公約をしっかり確認し、投票権を行使してほしい。