<社説>パーントゥ無形遺産へ 「来訪神」10件で連携を

 地域の伝統祭祀(さいし)が世界的な文化遺産になる。大変喜ばしいことだ。

 「宮古島のパーントゥ」を含む8県10件の伝統行事「来訪神 仮面・仮装の神々」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録される見通しだ。ユネスコの補助機関が勧告した。
 11月26日からの委員会で、勧告通りに決まると見込まれる。登録されれば、県内からは2010年の組踊に続き、2件目となる。
 宮古島のパーントゥは、平良島尻の「パーントゥプナハ」と上野野原の「サティパロウ」を総称したものだ。集落の厄を払い、福を招くとされる。
 島尻は旧暦9月に行う。木製の仮面とつる草を身に着けて、全身に泥をまとった3体のパーントゥが集落の住民や家々に泥を塗って回る。
 野原は旧暦12月の最後の丑(うし)の日に行う。仮面をかぶった少年を先頭に子どもたちが続き、女性たちが「ホーイ、ホーイ」と声を上げ、練り歩く。
 両者とも宮古島の風土が育み、歴史を重ねてきた。地域の喜びはひとしおであろう。今後、地域活性化や観光資源としての期待も高まる。世界的に認知度が上がることで海外からの観光客の増加も予想される。
 一方で課題もある。島尻のパーントゥでは、軽い気持ちで見に来た観光客が、泥を塗られたことに苦情を言い、トラブルになった事例もある。参観者に対して、伝統文化への理解を深め、尊重するよう周知する努力も欠かせない。見る側も地域の祭祀への敬意と配慮が求められる。
 野原では、少子化に伴う後継者不足が悩みの種になっている。「登録を機に、若い世代が戻ってきてほしい」という地元の願いは切実だ。
 パーントゥと同様に、仮面や仮装をした人が「神」として家々を訪れ、幸せをもたらす「来訪神」は各地にある。
 今回、政府が登録申請した行事は、パーントゥ以外に次の9件だ。吉浜のスネカ(岩手)、米川の水かぶり(宮城)、男鹿(おが)のナマハゲ(秋田)、遊佐の小正月行事(山形)、能登のアマメハギ(石川)、見島のカセドリ(佐賀)、甑(こしき)島のトシドン(鹿児島)、薩摩硫黄島のメンドン(鹿児島)、悪石島のボゼ(鹿児島)。
 いずれも「地域文化の多様性を示しており、保護対策も取られている」とユネスコ補助機関が評価している。
 今後は、この「来訪神」10件の当事者同士が連携を強めていくことを提案したい。過疎化対策や継承の在り方、観光と祭祀の調和など、共通する課題についてシンポジウムを開き、議論するのもいい。
 無形文化遺産は誇らしいことだ。今まで以上に地域内や世代間の結び付きを強めていってほしい。
 宮古島の宝であるパーントゥを過度に観光イベント化することは避け、先人から受け継いだ精神を後世まで大切にしたい。