<社説>石垣陸自着工方針 見切り発車は許されない

 石垣市への陸上自衛隊配備計画で、防衛省が本年度内に駐屯地建設に着手する方針を固めたことが明らかになった。予定地の平得大俣地区周辺には根強い反対があり、住民投票の実施を目指す運動も始まっている。見切り発車の着工は許されない。

 着工を急ぐのは、ことし改正され10月1日に施行された県の環境影響評価(アセスメント)条例の対象となることを免れるためだ。経過措置として、年度内に着工すれば対象から除外される。アセスには数年以上を要すると見込まれるため、駆け込み着工を狙っているのである。
 県アセス条例は一定面積以上の道路、ダム、飛行場、土地区画整理など対象事業の種類を定めていた。改正によって「面積が20ヘクタール以上の土地の造成を伴う事業」が追加され、約46ヘクタールある配備予定地も対象となる。
 さまざまな目的で各地で大規模な土地造成がなされており、対象事業を限定する方が不自然である。名護市辺野古の新基地建設や米軍北部訓練場のヘリコプター発着帯の工事でも環境破壊が大きな問題となっている。基地関連工事も対象となるよう、県議会が条例を改正したのは当然だ。
 条例の経過措置は計画が進行中の民間事業などの損害を回避するためでもある。政府の立場は利益を追求する民間企業とは異なる。民意も明確になっていない中で、経過措置を使う必要はないはずだ。
 自衛隊配備について中山義隆石垣市長は7月に受け入れを表明したが、3月の市長選では明確な賛否表明を避けていた。9月の市議選でも、事前に賛否を明らかにしていた議員のいずれも過半数に達していない。石垣市民の意思は明確に示されてはいない。
 石垣市は、1979年から2000年にかけて新石垣空港問題で二分した苦悩の歴史がある。県が進めた新空港建設計画で最初の白保地区の海上埋め立て案も、次の宮良牧中地区での計画も、反対運動や地元の抵抗によって頓挫した。その後、地元主導の建設位置選定委員会によってようやくコンセンサスを得た。今度は、政府の自衛隊配備計画が地域を分断している。
 10月に地元住民を中心に「石垣市住民投票を求める会」が発足し、署名活動を始めた。同会は、地元への説明が不十分で予定地の決定過程に透明性がないと指摘し、住民投票を通じて論議を深めたいとしている。この取り組みが市民の支持を獲得していくのか、注目したい。
 同会の金城龍太郎代表は、環境アセスを避けようとする防衛省を「誠実ではない」と批判した。地元の反対を押し切ろうという防衛省の姿勢は、名護市辺野古での強引な新基地建設と重なる。
 自衛隊配備を巡る議論を全市民的に深めることも大切だ。工事の強行は地域の分断を固定化させる。政府は民意を尊重すべきである。