<社説>FC琉球J2昇格 歴史の扉を開ける快挙


社会
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 FC琉球がJ2昇格とJ3優勝を同時に決めた。沖縄サッカーの歴史に新たな扉を開ける快挙であり、熱烈なサポーターや県民とともに心から喜びたい。

 沖縄から初のJ2チーム誕生となる。創立から15年、J3参入から5年での悲願達成に、奮闘した選手やコーチの努力を大いにたたえたい。
 今季のFC琉球は文句なしに強い。「超攻撃的サッカー」を武器に、7月の17節以降は首位を譲らず、独走を続けた。リーグ4節を残しての優勝決定はJ3史上最速だ。
 今季通算成績は19勝6分け4敗で勝ち点63。3日時点で2位鹿児島(勝ち点48)に大きく水をあけている。
 リーグ屈指の攻撃力は目を見張る。29試合で64得点。1試合平均2・2得点は、J3で断トツの1位だ。
 その背景には「3―1で勝つ」という攻撃的サッカーを貫いたことがある。失点を恐れず、リスク覚悟で前に出て攻め続ける積極プレーだ。
 6月からは前線への推進力を高める4―1―4―1のシステムに変更し、13戦負けなしの道を突き進んだ。両サイドバックが充実し攻撃に厚みが増した。クロス攻撃も加わり、多彩なゴールを展開できた。即戦力の新加入選手の活
躍もチームの力を底上げした。
 守備も、守護神のゴールキーパー朴一圭選手を要に「引く守備」ではなく「ボールを奪いに行く守備」というFC琉球のスタイルを見せた。
 金鍾成監督の手腕も高く評価できる。就任3年目で、攻撃的な勝てるチームを作り上げた。県民が誇れるクラブにまで高めたことに感謝したい。
 ホームで決めたJ2昇格に8千人近い観客は歓喜した。ホーム不敗という神話はサポーターの応援の力も大きい。
 強いチームにはおのずとファンが増え、観客も集まるのは、琉球ゴールデンキングスの例を見るまでもない。この強さを維持してサポーターを増やしていきたい。
 FC琉球が発足したのは2003年。県3部、飛び級をして県1部、九州リーグを経て、06年にJFLに昇格した。14年のJ3新設と同時に加盟し、9位、9位、8位、6位と順位を上げてきた。
 この15年間には、練習環境も厳しく、観客も伸びず、経営的に苦しい時期もあった。近年、運営母体の琉球フットボールクラブがフロント陣を強化し多角的に取り組んだことで、スポンサー数や観客数は倍以上に増えた。
 一方で、Jリーグからは財務基盤や組織体制の強化を求められている。課題の克服には行政や企業、サポーターの協力も必要である。
 J2昇格は、何よりも県民に元気と感動を、子どもたちには夢と希望を与えた。
 今後も、FC琉球が沖縄に根差した「わったーチーム」として愛されるように、県民挙げて支えていきたい。
 J2でも、さらなる高みに果敢に挑んでほしい。