<社説>米下院で民主多数 「米国第一」に歯止めを


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 米中間選挙はトランプ大統領にとって厳しい結果になった。トランプ氏を支える共和党は上院で過半数を維持したものの、下院は野党民主党が8年ぶりに多数派を奪還した。政権に対する反感が投票行動に表れたといえる。トランプ氏は猛省すべきだ。

 大統領選の2年後に行われる連邦議会上下両院選、州知事選などを総称して中間選挙と呼ぶ。4年に1度の大統領選の中間年に実施されるからだ。時の政権に対する審判の場と位置付けられている。
 改選前の議席は上院(定数100)が共和党51、民主党49、下院(定数435)が共和党235、民主党193、欠員7で、両院とも共和党が多数を占めていた。
 下院の任期は2年で改選は全議席。任期6年の上院は2年ごとに3分の1が改選される仕組みだ。今回は補選を加えた35議席が争われた。
 トランプ氏は選挙戦で精力的に遊説し、主として好調な経済と不法移民対策をアピールしてきた。オハイオ州での演説では「犯罪が増えてほしいなら民主党に、安全が欲しいなら共和党に投票を」と呼び掛けている。都合に合わせて状況を単純化し二者択一を迫るのもトランプ流だ。
 これに対し民主党のオバマ前大統領らは、トランプ政権が米国社会の分断を拡大させたと批判してきた。
 下院で少数与党に転落したことで、トランプ氏は難しい政権運営を迫られる。民主党の協力が得られず法案や予算の審議が滞る局面も予想される。メキシコ国境の壁建設や追加減税などが焦点となるが、2020年の大統領選挙に向けて内政面では実績をつくりにくくなるはずだ。
 その反動で対外政策に成果を求め、対日貿易赤字の削減で日本への要求を一段と強める可能性がある。「米国第一」主義をエスカレートさせるのではないか。
 16年の大統領選で民主党候補のクリントン氏の陣営がサイバー攻撃を受けた。ロシアが関与したとみられる。トランプ陣営がロシアと共謀した疑いがあり、政権から独立した特別検察官が捜査中だ。
 大統領の弾劾手続きは下院の過半数の賛成があれば開始できる。ロシア疑惑を議会で追及する動きが具体化することも考えられる。
 トランプ氏は、政権を批判するメディアを「フェイク(偽)ニュース」「国民の敵」と攻撃するなど、乱暴な言動が目立つ。見識も品格も感じられないが、根強い支持層がいる。
 多くのスキャンダルを抱えながらも世論調査で一定程度の支持率を維持している点は、日本の政権とも共通する。
 上下両院で多数派が異なる議会のねじれは、米国政治を停滞させるかもしれないが、チェック機能は強化される。
 民主党が、トランプ政権の行きすぎた「米国第一」主義と排外主義的な政策に歯止めをかけることを期待したい。