<社説>2025年大阪万博 懸念や矛盾の解決を


社会
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 2025年国際博覧会(万博)の開催地が大阪に決まった。地元の関係者は歓喜に沸いている。だが、喜んでばかりもいられない。7年間で取り組むべき課題は多い。

 万博の大阪開催は1970年以来55年ぶり2回目、国内では2005年の愛・地球博以来20年ぶりとなる。
 25年万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。健康、医療に関する技術貢献を前面に打ち出す考えだ。人工知能(AI)や拡張現実(AR)などの先端技術を駆使した展示が検討されている。
 期間は25年5月3日から半年間で、来場2800万人、経済効果2兆円を見込む。
 会場は大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)だ。湾岸都市開発の構想がバブル崩壊で頓挫した。08年五輪の選手村も計画されたが、誘致失敗後に広大な空き地が残されていた。万博誘致は、大阪府と大阪市にとって長年の負の遺産の清算にもなる。
 気掛かりなのは、その夢洲で前年の24年に、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)開業を目指していることだ。
 ギャンブル依存症の恐れが指摘されるカジノと、健康をテーマにした万博が並ぶのはそぐわない。矛盾しており、再考が必要ではないか。
 財政負担も課題だ。会場建設費の1250億円は、国、府と市、民間が3分の1ずつ負担する取り決めだが、企業分をどう集めるのか、現時点では見通せない。
 さらに運営費820億円、地下鉄延伸などに730億円も見込まれる。府と市は財政が厳しく、国費投入に伴う国民の負担増が懸念される。
 経費の査定は厳しくする必要がある。東京五輪・パラリンピックは当初の約7340億円が約1兆3500億円にまで膨らんだ。同じ轍(てつ)を踏むのは許されない。
 70年大阪万博は高度経済成長を後押しする歴史的イベントだった。しかし、今や博覧会の意義や影響力は薄れてきている。産業や技術を誇ったかつての国威発揚型から、環境保護など人類共通の課題への対策を示す理念提唱型に生まれ変わっている。
 万博に過度な期待をしてはいけない。特別博として開かれた75年の沖縄国際海洋博では、社会基盤の整備が進んだ一方で、期待が先行して過剰投資や土地買い占めが広がり、その反動による倒産ラッシュや失業者増、経済停滞を招いた。時代状況が異なるとは言え、大阪もバブルの再来は避けたい。
 開催が決まったからには成功させないといけない。関西には、iPS細胞技術をはじめ生命科学分野の研究機関が集まっている。こうした先端医療技術が広く途上国でも活用できるよう、提案していく万博を望みたい。
 経済効果や五輪後の景気浮揚策など自国の利益だけに目を奪われてはいけない。地球規模の課題を解決するという理念に基づき、人類に貢献する万博を目指してほしい。