<社説>雇用水増し処分に差 行政機関にも罰則規定を

 赤信号、みんなで渡れば怖くない。そんな体質なのだろう。「長年続き、いわば『みんな』悪かった。特定の誰かの責任を問うのは難しい」との政府関係者の発言に耳を疑う。

 障がい者雇用水増し問題のことである。2017年度に知事部局と教育委員会のいずれかで不適切計上が判明した38県のうち愛媛、三重など7県が職員への処分を実施したか処分を検討していることが分かった。
 処分を決めた県のうち愛媛は副知事ら58人を厳重注意や訓告とし、三重は17年度に水増しはなかったが、過去のミスを理由に知事自身も減給処分にすると表明している。行政機関が問題を自覚し、責任を明確にして職員を処分するのは妥当な判断である。
 ただ7県にとどまるのは、法令順守の模範を示すべき中央省庁が処分に及び腰であることが大きい。中央省庁33機関のうち28機関で昨年度だけでも3700人の水増しが発覚した。不適切計上が最も多かった国税庁のほか、国土交通省や法務省などが「意図的ではなかった」などとして処分を見送る方針だ。
 中央省庁で障がい者と認定された人には病気やけがで長期休暇を取っている人や、健康診断で異常を指摘された人など、明らかに障がい者とは言えない人も含まれていた。「過失ではなく故意に行われた可能性が高い」と専門家が指摘しているように、雇用率達成ありきで不正が行われていた疑いがある。
 責任を曖昧にしたまま処分をしないのなら、今回の教訓を生かすことはできないだろう。障害者雇用促進法を一層形骸化させてしまう懸念も拭えない。このままでは障がい者だけではなく国民も納得しない。処分などによる自浄作用を図れないのなら、第三者がチェックする仕組みなどの対策を早期に講じるべきだ。
 水増しは一定の雇用率達成が義務付けられた1976年からとみられている。仮に過失だとしても、42年間で万単位の障がい者の雇用が失われた計算になる。
 障害者雇用促進法は、従業員100人超の企業が法定雇用率を下回った場合は、納付金が課せられ、企業名が公表されることもある。政府は当初、法定雇用率を達成できなかった場合に支払う納付金の対象企業を「50人超」に広げる予定だった。今回の問題で企業に理解を得るのは難しいと判断し断念した。これも結果的に障がい者の雇用機会を奪ったことになる。
 国や地方公共団体に対してはそんな罰則的規定はない。民間に雇用を求める側が法律を守ることを前提にしているからだ。今回の問題によって、その前提条件が根本から崩れた。国が法を破るはずがないという、性善説に立った制度設計は非現実的だ。中央省庁をはじめ公的機関による違法行為に対し罰則を設けるべきだ。民間だけに厳しい現行制度は公正を欠いている。