<社説>官民ファンドの混乱 経産相の責任は重大だ

 朝令暮改とも言える政府の対応が大きな混乱を引き起こした。官民ファンド、産業革新投資機構の取締役11人のうち田中正明社長ら民間出身の9人が辞任することになったのである。発足してから3カ月もたっていない。

 産業革新投資機構は、資金規模2兆円の国内最大の官民ファンドだ。出資金約3千億円の約95%を政府が出している。事業再編やベンチャー企業育成を通して、世界に通用する産業を創出する役割が期待された。前身の産業革新機構は、企業救済の色合いが強い投資に批判があった。
 今年9月、経済産業省が経営陣の給与を年最大1億円超とする書面を提示したのが事の発端だ。機構と経産省はいったんはこの案で合意した。
 ところが経産省は、「国民が納得する相場観がある。高すぎる」(世耕弘成経産相)などの理由で一方的に白紙撤回した。約束をほごにしたわけであり、「これでは機構を育てられない」と田中社長が反発するのも無理はない。
 確かに1億円を超える報酬は公的機関では突出しているが、民間有力企業の経営者としては珍しくない。
 政府は4月の衆院経済産業委員会で「優秀な人材を獲得するためには成果主義を徹底すること、民間ファンドと比較し得る待遇を確保することが重要」と答弁していた。この方針を踏まえたのだとしても、国民の感覚からすれば1億円超はあまりにも高額だ。
 世耕経産相は「事務的失態」と述べ、責任の大半を部下になすりつけた。「金額は説明を受けていなかった」と釈明している。なぜ最初から国民が納得する報酬額を示すことができなかったのか。経産相の指導力不足が失態を招いた点は否めない。責任は重大だ。
 経産省と機構の対立は報酬だけではない。機構は傘下に複数のファンドを設立し投資の拡大を図る方針だった。経産省は、投資実態が把握できなくなるとして、透明性を確保するためのルール作りを求めた。これについても機構側が抵抗したという。
 記者会見で田中社長は「経産省からの提示が次々と変更された」「政府による一方的な破棄は日本が法治国家でないことを示している」などと批判している。政府は重く受け止めるべきだ。
 政府が資金を投入する官民ファンドに失敗は許されない。十分な成果を上げるには優れた知見と経験を有する人材が不可欠だ。有能な人材にはそれに見合った報酬が必要だし、相当程度、自由な投資判断を認めなければ期待された役割が果たせないだろう。
 機構は事実上の機能停止に陥った。政府が運営への関与を強め、報酬も抑えられるという条件下で、優秀な経営者が集まるとも思えない。
 そもそも経産省が想定する官民ファンドの在り方そのものに無理があるのではないか。この際、抜本的に見直した方がいい。



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