<社説>’19沖縄経済展望 活況を県民に還元したい


社会
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 拡大を続ける沖縄経済は2019年、さらなる飛躍に向けた準備の年になるだろう。20年の那覇空港第2滑走路の開業、東京五輪・パラリンピックを目前にした年だ。沖縄を訪れる観光客もさらに増えることが予想される。

 それに向けた準備を厚くし、さらに好況の恩恵を沖縄社会に還元させたい。そのためにも観光に限らず交易、ものづくりなどの総合的な施策が求められる。
 日本銀行の県内企業短期経済観測調査(短観、全産業)で、業況判断指数(DI)が「良い」としたのは27四半期連続で、バブル期の25四半期を超えた。
 直近の18年10―12月もプラス33と高水準を維持し、全国のプラス16と比べても沖縄の活況が際立っている。この傾向は19年も続くと思われる。
 19年はモノレール浦添延長線が完成し、浦添市に県内最大規模のショッピングセンター「サンエー浦添西海岸パルコシティ」が開店する。ハワイの有名ホテル「ハレクラニ沖縄」など大型ホテル計画も多数、進められている。
 いずれも観光客の増加には必須のインフラと言え、県が掲げる21年度までの観光客1200万人の受け入れ態勢を整えるものとなる。またコンビニ大手のセブン―イレブンの進出も決まり、流通地図は大きく変化しそうだ。
 一方で、リスク要因は大きく3点ある。1点目は米中貿易摩擦が中国経済に与える影響である。観光客のおよそ3割が海外からという沖縄にあって、国際情勢の変化が与える影響は少なくない。13年には尖閣諸島の国有化による日中関係の悪化などで中国人観光客が激減した。
 2点目は10月の消費税増税だ。引き上げが消費心理を冷え込ませ、旅行の手控えが懸念される。さらに県内の中小の小売店などは経理システムの変更など増税対策が経営を圧迫する可能性もある。
 3点目は今も問題になっている人手不足だ。新店舗の増加などにより、観光や建設にとどまらず流通や小売りなどでも人材確保が難しくなっている。結果として需要が取り込めず、賃金の上昇にも対応できない小規模事業者が出ている。
 リスクに対応するとともに活況を県民に還元するよう、人に投資して賃金を上げ、地場の産業を強くする必要がある。働き方改革には企業側の取り組みもますます重要になってくる。
 行政には国際物流ハブを活用した交易、ものづくり、ITなど観光だけでないリーディング産業づくりに力を入れてほしい。長期的には環太平洋連携協定(TPP)が県内農業にもたらす影響を想定し、農水産業の振興を図りたい。
 活況を好機に、全国最下位の1人当たり県民所得、低い正社員比率などの雇用問題、地場産業の育成など沖縄社会の課題を解決へ進める年にしたい。