<社説>緊急性ない110番通報 軽率な行為が人命脅かす


社会
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 緊急時に110番通報がつながらない、通報遅れによって警察の事件・事故対応が遅れるとなれば、人命に関わる事態だ。

 沖縄県警がまとめた2018年の110番通報の中で約4割が「緊急性がない」と判断される内容だった。こうした電話のせいで、緊急の通報が遅れることがあってはならない。万が一に備えるためには一人一人が110番の適正な利用を心がけることが大切だ。
 110番以外に、緊急性はないものの警察に相談、要望がある場合には「警察相談専用電話(♯9110)」や各警察署の警察安全相談窓口が設けられているが、広く知られているとは言い難い。沖縄県警は緊急外通報を専用電話や窓口へ誘導し、110番通報を適切に利用させるためにもさらに県民への周知を図る必要がある。
 10日の「110番の日」に合わせて県警が集計した18年の110番通報は前年に比べ1298件増え、19万2637件となった。全国では昨年1~11月に受理された110番通報は前年同期に比べ15万3210件増の835万9712件で、沖縄は全国で14番目に多かった。通報件数は年々増加傾向にあり、18年は1日平均527件の通報がある計算だ。月別では観光客が多い9月が最多となる。
 そのうち「いたずら・無言」など、受理されない通報が10・7%あった。
 受理した通報の中でも約3割に当たる32・2%は道を尋ねたり、免許更新について聞いたりするなど緊急性のない内容だった。全国では18年1~11月に受理した中で緊急性がない内容の通報は約2割だったから、沖縄は大きく上回っている。
 17年の110番受理件数は全国の警察署の中で那覇署が最も多く、国内最大の繁華街・歌舞伎町を抱える新宿署を超え、11年連続全国一という記録を持つ。
 過去には「雨で道路にミミズがたくさん出ている」「近所の野良猫の鳴き声がうるさい」などの電話のほか、虚偽の事件通報もあった。警察は通報が悪質な場合、偽計業務妨害や軽犯罪法違反(虚偽申告)容疑で摘発もしている。軽い気持ちで電話をしているかもしれないが、責任が生じることを自覚したい。
 見逃せないのは泥酔者の通報だ。県内の110番受理件数の5番目が泥酔者の通報で約1万6千件もあった。路上寝や交通事故などにつながる泥酔者は放置できないが、個々人が注意すれば防げるものだ。
 緊急時でない110番は、日常の事件事故だけではなく災害が起きた場合に対応できなくなる恐れもある。110番通報を、人々の安全を守る社会インフラと捉え、有効に活用できる態勢にしておかねばならない。軽率な110番が人命を脅かしかねないことを肝に銘じたい。