<社説>JOC会長贈賄容疑 五輪招致在り方問い直せ


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 2020年の東京五輪・パラリンピック招致を巡り国際オリンピック委員会(IOC)委員に賄賂を贈った疑いで、フランス司法当局が日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長を容疑者として正式捜査に入った。

 記者会見を開いた竹田会長は、自らの潔白を主張しただけで質問は受け付けず、7分余りで終了した。説明できなければ疑惑は深まるだけだ。
 発端は、2016年5月の英紙報道だった。開催都市決定の投票権を持つIOC委員のディアク氏(セネガル)の息子が関係するシンガポールの口座に、日本円で2億2千万円余りが送金されたというのである。
 招致委員会の理事長でもあった竹田会長は、コンサルタント会社への正当なコンサルタント料だったと説明した。国会にも呼ばれ、贈賄疑惑を否定した。
 JOCは外部の調査チームを設置し、同年9月に報告書を出した。コンサルタント会社との契約に違法性はなく、IOCの倫理規定違反にも当たらないと結論付けた。竹田会長は「疑惑は払拭(ふっしょく)された」と説明していた。しかし、これで収まるわけがなかった。
 ディアク親子は、ロシアの組織的ドーピング問題隠蔽(いんぺい)で賄賂を受け取ったとして捜査対象になっており、息子は国際陸連から永久追放処分を受けた。コンサルタント会社の経営者はこの息子の友人とされる。フランス検察は、日本から送金があった時期にディアク氏側がパリで多額の支出をしたことを確認したと発表している。
 16年のJOC外部調査チームは、このコンサルタント会社の経営者にもディアク氏側にも接触できず、資金がどう使われたのかを解明できなかった。この会社と契約に至った理由もあいまいだ。
 その後も竹田会長が事情聴取されるなど捜査は続き、今回の正式捜査となった。
 IOCの倫理規定は、買収などの不正につながるとして委員の立候補都市への自由な訪問や個別接触を禁じている。そのため、IOC委員とつながりを持つコンサルタントに高額の報酬でロビー活動や情報収集を依頼するようになったことが背景にある。
 招致側に贈賄の意図がなくても、コンサルタントを介して票が金で買われる可能性は消えない。委員による投票制ではなく、客観的データによるポイント制にするなど、仕組みを根本的に変えることも検討すべきではないか。
 東京に決定した13年の招致レースでは政府を挙げて票集めに動いた。当時、ディアク氏がアフリカ票をまとめたという報道もあった。菅義偉官房長官は「説明責任を果たしていただきたい」と竹田会長に求めたが、日本政府も当事者だ。フランスの捜査を待つだけでなく、日本側も積極的に調査すべきだ。同時に、五輪招致の在り方を抜本的に問い直すべきである。