<社説>石垣陸自3月着工 「アセス逃れ」は姑息だ


社会
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 石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備に関して、防衛省は3月1日に駐屯地建設に着手すると県に通知した。工事区域は平得大俣地区のうちの約0・5ヘクタールの用地造成だ。

 そもそも配備予定地周辺の4地区は配備に反対している。配備の賛否を問う住民投票を求める動きも活発化している。地域の理解も得ないままに工事を開始することは許されない。しかも、改正された県環境影響評価(アセスメント)条例の適用対象になる前に見切り発車の形で工事を進めようとしている。
 改正アセスは県土の環境破壊を防ぐために必要とされ、県議会で条例改正が可決された。それをくぐり抜ける「アセス逃れ」は姑息(こそく)であり、環境保全をないがしろにするものだ。
 沖縄防衛局は1月4日に県に対し赤土等流出防止条例に基づき、着工を通知した。工事をする面積は駐屯地建設に伴う用地造成面積約29ヘクタールの1・7%程度で、本格工事とは言えない。
 県アセス条例は一定面積以上の道路、ダム、飛行場、ゴルフ場、土地区画整理など対象事業の種類を定めていた。が、2018年に改正され、施行区域が20ヘクタール以上で、土地造成を伴う事業は新たにアセスの対象にした。それにより基地施設の整備も対象となった。
 県によると改正条例は神奈川県などの条例と並んで全国で最も厳しい要件となる。それも、沖縄の自然環境を守るために必要な措置だ。現在、さまざまな目的で土地造成がされている中、対象事業を限定する方が不自然だ。「環境へ配慮した事業計画」が求められるのは民間であっても公共であっても変わらない。基地建設も同様だ。
 アセスには最短でも3年程度かかるため、着工が遅れる可能性もある。防衛局は遅れを避けるため、適用前の年度内駆け込み工事を図ったのだろう。
 しかし、配備計画を巡って、石垣市では賛否を問う住民投票条例を求める署名が必要数以上集まっており、21日から条例案の審議が市議会で始まる予定だ。条例制定請求者の「市住民投票を求める会」は、18歳になる高校生が進学などで島外に出る前に投票できるよう、2月中の実施を希望している。
 配備予定地周辺の4地区(於茂登、開南、川原、嵩田)の公民館長は防衛局が先月開催した説明会に出席せず、抗議文書を提出した。地元の反対は根強い。さらに地元から出されている水源地汚染などの環境悪化への懸念を払拭(ふっしょく)するなら、なおさらアセスは必要だ。
 地元の意向にかかわらず工事を強行するのは、建設を既成事実化しようとしているように見え、辺野古新基地建設とも重なる。防衛省は拙速な着工をやめてアセス条例に基づく手続きを取り、さらに住民投票の結果を含めた民意を尊重すべきだ。