<社説>参院選候補固まる 政策論争を深めてほしい


社会
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 夏の参院選に向け、県政与党の社大、野党の自民それぞれが沖縄選挙区(改選数1)に擁立する候補者を決めた。事実上の一騎打ちとなる見通しだ。

 社大党は現職の糸数慶子氏の後継者として新人の琉球大法科大学院教授・高良鉄美氏(65)を擁立する。自民党県連は新人のシンバホールディングス会長・安里繁信氏(49)を候補者に立てる。今後、与党は「オール沖縄」勢の結集、野党は自民、公明、維新の枠組みづくりなど、共にどれだけ幅広い協力態勢で選挙に臨めるかが焦点となる。
 ただ両陣営とも協力態勢づくりに課題を抱えている。社大側は3期目に意欲を示していた現職の糸数氏を本人の意思に反して降ろした形だ。糸数氏は候補者選考の在り方に強い不満を示しており、離党届を出した。現時点で挙党一致態勢のめどは立っていない。
 一方、安里氏は昨年の知事選で自民県連の人選決定前に出馬を表明し、候補者一本化が難航した経緯がある。このため自民内には冷めた見方がある。公明内には安里氏擁立に反発する声も少なくない。
 両陣営共に、これらの不安材料をどう払拭(ふっしょく)するかが注目される。
 選挙の日程は7月4日公示、21日投開票が有力となっている。平成からの改元後初の大型国政選挙となる。全国から見ると、安倍晋三首相が目指す「憲法改正」の行方を左右するほか、消費税率10%への引き上げ、アベノミクスの評価、日ロ交渉の外交などが争点になるとみられる。「安倍1強」と呼ばれる長期政権への審判ともなる。
 県内では、沖縄最大の政治課題であり続けている米軍基地問題、とりわけ名護市辺野古の新基地建設の是非が争点になるのは間違いない。その是非を問う2月24日実施予定の県民投票、名護市辺野古を選挙区に含む4月の衆院沖縄3区補選を経た選挙となり、再び民意を示す機会となる。
 選挙戦では、土砂投入が続いている新基地建設問題をどう解決するかだけでなく、米軍普天間飛行場の閉鎖・返還問題の解決、危険性除去の手法も同時に問われる。
 加えて沖縄振興計画が期限を迎える2021年度を見据え、沖縄振興をどう図るか、中・長期的ビジョンの議論も肝要だ。子どもの貧困問題の解決や教育・福祉の分野も含めて政策論争を深め、難題を打開する機会にしたい。候補者の陣営は、その議論にたくさんの有権者が参加できる場を多く設けてほしい。
 各候補者は一つ一つの政策課題に真摯(しんし)に向き合い、政治姿勢を明確にすべきだ。参院選は今後の県内政局を占う天王山となる。玉城デニー知事の就任後初の全県選挙となり、玉城県政の評価も焦点だ。
 参院選の政策論争は有権者と共に沖縄の将来を描く重要な共同作業だ。有権者の1票はそのビジョンを選ぶ大事な選択となる。