<社説>県民投票3択修正 自民も歩み寄ってほしい


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 辺野古新基地建設の賛否を問う県民投票が全市町村での実施に向けて動きだした。「賛成」「反対」の二つの選択肢を、「どちらでもない」を加えた三つに修正する打開案について、玉城デニー知事を支える与党の社民・社大・結、会派おきなわ、共産党の3会派が容認する方針を新里米吉県議会議長に伝えたのである。

 今後、議長が会派代表者会議を招集し、3択の条例改正案について調整に乗り出す。党利党略を排し、県内の全ての有権者が投票できる環境を整えてほしい。
 3択案は中立の立場の公明党県本の意向を受け、新里議長が提起した。公明は昨年、県議会で県民投票条例案を審議した際「やむを得ない」「どちらとも言えない」を選択肢に加えた修正案を自民と共に提出していた。混乱した状況を憂慮し歩み寄った格好だ。
 これに対し、賛否2択の県民投票条例制定を直接請求した「辺野古」県民投票の会(元山仁士郎代表)も容認した。玉城知事は、県議会の全会一致を前提に、支持する方針に転じている。
 不参加を表明した、うるま、沖縄、宜野湾、宮古島、石垣の5市からは、3択案を打診した県に対し「県の努力を歓迎したい」などと前向きな返答があったという。
 最大の焦点は、3択案の是非を明らかにしていない野党・自民党県連の対応に絞られる。同県連は(1)県民投票条例・実施日の仕切り直し(2)県議会での全会一致の可決(3)市町村の理解を得るための協議―を知事に求める緊急声明を発表したばかりだ。
 声明文には、全県民が投票できる体制づくりを求める―とある。それが真意なら、必ずしも「仕切り直し」にこだわる必要はない。柔軟な姿勢で協議に臨んでほしい。仮にも、与党から拒まれることを見越した声明だったとすれば、県民そっちのけのパフォーマンスと批判されるだろう。
 このままの状況が続いて、5市が投票事務を実施しなかった場合、全有権者の31%に当たる約36万7千人が投票の機会を失う。
 「辺野古」県民投票の会の取り組みに共感して署名した人の大多数はそのような事態を望まないはずだ。だからこそ、県民投票の会は3択案を受け入れた。
 賛否2択の方が明快だが、「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択に変えたからといって、埋め立ての賛否を問う投票の趣旨を損なうことにはならない。
 特定の事象に対する民意の在りかを明らかにする上で、住民投票以上に有効な手段ははない。投票の結果に法的拘束力はないものの、政策決定に影響を及ぼす可能性がある。結果の持つ意味は重い。
 新基地建設問題は沖縄にとって極めて重大な事案である。3割もの有権者の投票権が奪われる事態は、何としても避けるべきだ。自民、5市が歩み寄ることを強く望む。