<社説>県民投票全県実施 新基地巡る議論深めたい

 辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票が、全市町村で実施されることになった。県議会与野党が、選択肢を「賛成」「反対」の2択から、「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択に修正することで合意したからだ。

 これを受け、うるま、沖縄、宜野湾、宮古島、石垣の5市も参加する方向に転じた。全有権者の31%に当たる約36万7千人が投票の機会を失う事態だけは避けられた。
 この間、党利党略の思惑で動いているように見えた政治家たちが、ぎりぎりのところで分別を働かせ、落ち着くべきところに落ち着いたということだろう。「全有権者に等しく投票権を保障すべきだ」という県民世論が後押ししたのは間違いない。
 県民投票が実施されるのは1996年以来23年ぶりだ。前回は日米地位協定の見直しと在沖米軍基地の整理縮小の是非が問われた。整理縮小・地位協定見直しへの賛成は48万2538票で、投票者の89・09%に達した。投票率は59・53%だった。
 今回は辺野古の埋め立てという具体的な事象への賛否が問われる。条例は、賛成、反対のいずれか多い方が投票資格者の総数の4分の1に達したとき、「知事はその結果を尊重しなければならない」と定め、首相、米大統領に結果を通知することを盛り込んだ。
 96年の新潟県巻町の住民投票では6割が原発建設に反対し、結果として計画は撤回された。2000年の徳島市の住民投票では吉野川可動堰(ぜき)建設への反対が9割を超え、計画が中止されている。どちらも住民投票が政策判断に決定的な影響を及ぼした。
 投票結果に法的拘束力がないとはいえ、有権者が民意を直接示す意義は極めて大きい。そのことは、過去の住民投票の事例からも明らかだ。
 名護市辺野古の埋め立ては、普天間飛行場の移設に伴う新基地建設のため政府が進めている。この際、その是非を巡り議論を深めたい。米軍基地が集中する沖縄の現状について県民一人一人が真剣に考える絶好の機会になる。
 大切なのは、一人でも多くの有権者が投票所に足を運ぶことだ。もしも低い投票率にとどまったならば、賛否の結果以前に、県民投票の持つ説得力が弱まってしまう。投票事務の執行者である玉城デニー知事は、県民投票の周知徹底を図るため全力を挙げるべきだ。
 今回、不参加の方針だった一部の市だけは投票日を遅らせる可能性も取りざたされた。2月24日の投票日まで1カ月を切っていて準備が間に合わない恐れがあったためだ。その場合、開票は全県一斉に行うため、結果の公表も先送りされる。
 投票日が別になると、その後の状況の変化が投票行動に影響を及ぼし、場合によっては、不平等や混乱を招きかねない。全県同日実施は至上命令だった。