<社説>千葉小4女児死亡 市教委の責任も重大だ

 「お父さんにぼう力を受けています。先生、どうにかできませんか」。これは、自宅浴室で死亡した千葉県野田市立小4年・栗原心愛(みあ)さんの学校アンケートへの回答だ。

 事もあろうに、この悲痛なSOSが、虐待の張本人と名指しされた父親に筒抜けになっていた。野田市教育委員会がコピーを渡していたのである。秘密を守るので正直に答えてほしいと呼び掛けて提出させたアンケートだ。学校を信じ、勇気を振り絞って書いたのだろう。教委の対応は裏切り行為にほかならない。
 回答文を見た父親が暴力をエスカレートさせる可能性に思いが及ばなかったのだろうか。いかなる理由があれ、教委の行為は許されるものではない。責任は極めて重大だ。
 父親は1月25日、心愛さんに冷水シャワーを浴びせるなどの暴行を加えたとして傷害の疑いで逮捕された。亡くなった心愛さんには複数のあざがあった。千葉県警は虐待があったとみて調べている。
 心愛さんが糸満市に住んでいた2017年7月、「父が娘を恫喝(どうかつ)している」と親族が市に情報提供した。糸満市は、虐待につながる不安要素を確認できなかったため、転居先の野田市に「恫喝」の情報は伝えていない。果たして糸満市の対応はこれでよかったのだろうか。
 心愛さんは野田市での学校アンケートで父親からの「いじめ」を訴えた。虐待の可能性が高いと判断した千葉県柏児童相談所は17年11月7日から12月27日まで心愛さんを一時保護した。
 その後、父親が学校を訪れ「一時保護に親族一同大変憤慨している。訴訟を起こす」と抗議し、アンケートのコピーを渡すよう迫った。いったんは拒否したものの、3日後、心愛さんの「同意書」を持参したため市教委がコピーを渡したのだという。
 暴力を振るうと訴えられている父親が、虐待を受けた疑いのある児童に書かせた同意書だ。額面通り受け取っていいはずがない。少なくとも、児童相談所に状況を説明し、助言を仰ぐべきだった。
 心愛さんは18年1月に別の野田市立小に転校した。一時保護の解除後、児童相談所が心愛さん宅を訪ねることは一度もなかった。学校生活の適応が良かったことを理由に挙げるが、もっときめ細かに対処すべきだった。
 心愛さんは今年1月7日から学校を欠席していた。父親は「沖縄の妻の実家にいる」と連絡し、その後、休みを延長すると伝えている。児相に一時保護されたことのある児童の長期欠席だ。不審に思わなかったのだろうか。学校の対応にも疑問がある。
 子は親を選べない。不幸にして冷酷非道な親の下に生まれる子どもがいる。
 どうすれば惨事を防ぐことができるのか。事件の真相を徹底的に究明することで問題点を洗い出し、再発防止に生かさなければならない。