<社説>麻生氏不適切発言 自浄能力を欠いた政権だ

 麻生太郎副総理兼財務相が、またしても不適切な発言をした。3日に地元・福岡で開かれた集会で少子高齢化に触れ「子どもを産まない方が問題だ」と述べたのである。

 そもそも、子どもをつくるかどうかは個人が選択することだ。つくりたくても持てない人がいる。発言は、そうした人たちを傷つける。人権感覚が欠如していると言わざるを得ない。
 経済的な事情や雇用環境のせいで子どもをつくることをためらうケースもある。誰もが安心して働き、子どもを産み、育てることのできる社会を築くのは政治家の使命だ。政治の至らなさを棚に上げて「産まない方が問題」と言うのは見当違いも甚だしい。
 これまで、麻生氏の発言が問題視されたことは何度もある。だが安倍政権内で責任が追及されることはなく、不問に付されてきた。
 2013年には東京都内での講演で「ドイツのワイマール憲法はいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」と述べ、撤回した。国際的な影響力を持つユダヤ系団体から「どんな『手口』を学ぶ価値があるのか」と批判された。
 17年8月には横浜市で開いた麻生派研修会の講演で「(政治家を志した)動機は問わない。結果が大事だ。何百万人を殺したヒトラーは、いくら動機が正しくても駄目だ」と述べた。翌日、撤回するコメント出している。
 ナチス・ドイツの独裁者を擁護していると受け取られかねず、政治家としての適性が疑われる。欧米の閣僚が同じような発言をすれば、進退問題に直結するだろう。
 昨年4月に当時の財務事務次官が女性記者へのセクハラで辞任した際には「はめられ訴えられているんじゃないかとか、いろいろなご意見は世の中いっぱいある」と述べた。二次加害に等しい発言だ。閣僚にふさわしい見識も品位も全く感じられない。
 麻生氏は14年12月の衆院選応援演説でも、少子高齢化に伴う社会保障費増に関し「子どもを産まないのが問題だ」と述べ、釈明に追われた。
 今回は4日の衆院予算委で発言を撤回した後、5日になって「不快に思われた方がいるならおわびを申し上げる」とようやく謝罪した。
 麻生氏は第2次安倍内閣が発足した12年12月から副総理兼財務相の要職にある。昨年、財務省で森友学園を巡る決裁文書改ざんという前代未聞の不祥事が起きたにもかかわらず留任した。一昔前であれば引責辞任が確実視される事案だった。続投させた安倍晋三首相の判断は、不可解極まりない。
 麻生氏だけは何を言っても許され、自らが率いる組織で重大な失態があっても、辞めさせられることがない。政権の自浄能力のなさを象徴する存在ともいえる。このような現状が望ましいはずがない。