<社説>熱帯びる沖縄経済 活況を雇用の質向上に


社会
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 沖縄経済の活況が続いている。日銀短観で、県内企業の景況感を示す業況判断指数(DI)のプラスが27四半期連続となり、バブル期を超えたことがその象徴だろう。投資先としても有望視され、県経済が「熱く」なっていることが目に見えてきた。

 活況の要因はなんと言っても好調な観光と人口増だ。観光は外国人客の急増とともに国内客も伸び続けている。国内でも数少ない人口増加地域である沖縄は若年人口も比較的多く、消費と雇用確保が見込める。今後は活況の「熱」を沖縄社会に還元する策が求められる。
 観光で熱視線が注がれる地域の一つが宮古島だ。宮古島は、入域観光客数で見ると沖縄本島や石垣島に水をあけられ、観光地としては後発だった。しかし、全長3・54キロに及ぶ伊良部大橋が開通した2015年1月以降、状況は一変した。
 観光客は急増し、ホテルの建設ラッシュにより地価は高騰した。働く人も増え、アパートの空室が1年も出ないほどだ。ことし3月30日に予定される下地島空港旅客ターミナルの開業を見据え、地元だけでなく国内外の投資はますます増えそうだ。
 沖縄県の入域観光客数は18年に984万2400人と過去最多となった。11年以降、観光客は右肩上がりを続けているが、特に外国人観光客数の増加が著しい。11年に28万人だったのが18年には10倍以上の290万人になった。爆発的と言っていい伸びだ。
 この勢いを取り込もうと、宮古島だけでなく、県内各地でホテル投資は活発だ。県内でこの2年内に開業を予定するホテルは少なくとも44。客室数は計7350室増えて5万室を超える見込みだ。16年までは年間1500室前後の伸びだったから、急増ぶりが分かる。
 特に海外からの投資が熱い。これまでの米国ファンドなどに加え、台湾や香港の資本が沖縄に進出している。沖縄の発展可能性を見込んでの積極投資だ。
 さらに国内有数の人口増地域であることも沖縄の発展可能性を支える。18年に人口が増えた東京など6都県のうち、沖縄は唯一、出生数が死亡数を上回った。いきおい子どもや若年層が多く、消費は活発だ。それを見込んだ大型店舗、県内外企業の出店も相次ぐ。
 ただ「熱」を県民に還元する仕組みをつくらなければ、自立型経済とは言えない。失業率は改善したとはいえ、18年は3・4%。1人当たりの県民所得も全国最下位から抜け出せていない。働く人に恩恵を増やして所得を上げ、地域に投資して地場の産業を強くしていかねばならない。
 アジアに近い地の利、人口が増え続ける社会の利、世界に冠たる観光地の可能性を秘めた環境の利を生かし、この「熱」を県民の力にしていきたい。