<社説>多い飲酒絡みの事故 飲んだら乗るなの徹底を


社会
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 酒を飲むなら運転しない。運転するなら酒は飲まない。当然のことをどうして実践できないのか。

 2018年に県内で発生した交通人身事故に占める飲酒絡み事故の構成率は1・76%で全国ワースト2位だった。17年比で0・17ポイント増えている。飲酒運転の摘発は2222件で、全国で最も多い。
 気になるのは「確信犯」が多いことだ。県警交通部が18年に実施した摘発者への飲酒運転実態調査によると、回答者の55・8%が「飲酒後、車を運転するつもりだった」と答えていた。規範意識が欠如したドライバーが少なくないことを示している。
 酒が悪いとは言わない。適量を守れば人間関係の潤滑油にもなる。模合などの懇親会や各種宴会を盛り上げ、より愉快なものにする。
 だからといって酒を飲んで車を運転することは絶対に許されない。本人に自覚がなくても、アルコールによって反応が鈍くなり、注意力、判断力、運動能力が低下するからだ。飲酒は間違いなく交通事故の引き金になる。
 道路交通法は、酒気を帯びて運転する行為だけでなく、飲酒者に車両を提供したり、運転する者に酒類を提供したりすることも禁じている。
 酒席で車を運転してきた人がいれば酒を勧めてはならないし、どうしても飲むというのならタクシーか運転代行を呼ぶべきだ。1杯だけならいいだろう―といった身勝手な言い分は決して許されない。
 交通人身事故に占める飲酒絡み事故の構成率は1990年から16年まで27年連続で沖縄が最も高かった。17年にワースト4位となり、全国最悪を脱した。18年は2位だ。いつワースト1位に逆戻りしてもおかしくはない。
 ウチナーンチュ(沖縄県人)のおおらかな県民性を説明するときに「テーゲー」という沖縄方言がしばしば使われる。いい意味では「ほどほど」、悪い意味では「いいかげん」ということだ。安全が第一の自動車の運転で「いいかげん」は命取りになる。
 モノレール以外に軌道系交通機関がない沖縄では、移動手段の主力はバス、タクシー、そして自家用車である。戦前は軽便鉄道が北は嘉手納、南は糸満まで走っていたが、沖縄戦で焼失し、消滅した。いやが上にも車への依存度は高くなる。
 そのような交通環境にあるからこそ、なおさら飲酒運転の撲滅に本腰を入れて取り組まなければならない。
 酒を飲んで運転すると、本人だけでなく、他の運転者やその同乗者、歩行者らに危害を及ぼす恐れが著しく高くなる。これまで飲酒運転によって多くの命が失われた。重い後遺症に苦しむ人は少なくない。取り返しのつかない災いを呼び寄せる行為だ。
 県民一人一人がそのことを強く自覚し「飲んだら乗るな 乗るなら飲むな」を徹底する必要がある。