<社説>辺野古新護岸着工 民主国家は建前だけか

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で政府が新たな護岸の造成に着手した。玉城デニー知事が1日に7割超が埋め立てに反対した県民投票の結果を安倍晋三首相に伝えたばかりだ。民意を全く顧みない姿勢は民主国家にあるまじき態度であり、断じて容認できない。

 特に看過できないのは県民投票の結果にかかわらず工事を継続する方針を事前に決めていたことだ。岩屋毅防衛相が5日の参院予算委で明らかにしている。新護岸の着工も既定方針だったのだろう。
 どのような事態に直面しても、立ち止まって考えることもせず、なりふり構わず工事を進めようとする。辺野古新基地ありきで、完全に思考が停止している。
 「沖縄には沖縄の民主主義があり、国には国の民主主義がある」と岩屋氏は県民投票後の閣議後会見で述べた。沖縄の民主主義は国の民主主義によって押しつぶしても構わないと考えているらしい。これでは民主主義の仮面をかぶった強権国家である。
 新基地建設の護岸工事はこれで9カ所目だ。政府はサンゴの移植なしに一部の工事は可能と主張するが、専門家は周辺に生息する小型のサンゴ群に致命的な影響を及ぼす可能性を指摘している。
 新たな護岸の工事を進めても、全体の工期短縮につながるわけではない。既成事実を積み上げて、反対する県民の諦めと封じ込めを狙っているのは明らかだ。
 建設現場周辺には活断層が存在する可能性が高い。立石雅昭新潟大名誉教授(地質学)ら専門家の調査によって判明した。立石氏は「基地に保管、貯蔵される軍事物資の中身によっては、(活断層の活動による被害で)住民の命が脅かされる」と警鐘を鳴らす。
 住民の安全のために必要な調査もせず、見切り発車で工事を始めた実態が改めて浮かび上がった。
 国策の名の下に地域の民主主義を押しつぶす手法が、沖縄だけに向けられたものであるのなら、差別以外の何物でもない。
 もし差別でないとすれば、同様の強圧的な手法が全国で繰り広げられることになる。例えば、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場でも、地元の同意なしに強引に建設を推し進めるだろう。住民投票で反対が多数を占めたとしても、辺野古新基地の例にならって、黙殺すればいいのである。
 そのような強権国家を誰が望んでいるのか。今、問われているのは日本の民主主義の在り方だ。政府による新基地建設の強行を沖縄だけの問題と捉え、傍観するならば、いつ自らの身に跳ね返ってこないとも限らない。
 安倍政権は独裁国家を目指しているのだろうか。そうでないのなら、県民投票で示された民意を尊重し、直ちに辺野古の新基地建設工事を取りやめるべきだ。



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