<社説>女性が活躍する社会 負担の足かせまず外そう


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「日本社会で最も活用されていない人材は女性」と言われる。それを裏付けるデータが、3月8日の国際女性デーに合わせて国際労働機関(ILO)が発表した報告書にあった。

 管理職に占める女性の割合を見ると日本は12%にとどまり、先進7カ国(G7)で最下位となった。G7では米国の39・7%を筆頭に日本を除く6カ国はいずれも20~30%台となり、世界全体でも27・1%と3割近くに達した。日本の低さが際立っている。
 県内でも同様だ。例えば女性が7割以上を占める小学校教諭。しかし教頭以上の管理職に占める女性の割合は22%と低く、男女比率が逆転している。中学校ではさらに下がり、16・2%、高校は10・4%となった。
 安倍政権は指導的地位にある女性の割合を「2020年までに30%」にするという目標を掲げるが、達成は不可能と言っていい。なぜ、日本の女性の登用は遅々として進まないのか。要因の一つは家事や育児、介護を「女性の仕事」とする性別役割分担意識が根強いためであろう。
 総務省の16年の調査では、家事関連時間は男性が1日44分、女性は3時間28分で、男女差は依然大きい。女性の就業率を折れ線グラフにすると、日本は30代から40代で出産・育児による離職が多く、M字カーブを描く。育児や家事が女性の仕事とされ、さらに待機児童問題や長時間労働など女性の就労を阻む課題が解消していないからだ。
 スイスの国際機関が発表する男女平等のランキングで日本は149カ国中110位(18年)と、低水準に甘んじている。子育て支援が手厚い先進諸国ではM字カーブは見られず、女性管理職の割合も高い国が多い。4割近くのスウェーデンでは、男性の育児休業取得率が90%以上だが、日本の男性の取得率は3%程度だ。
 職場ジェンダー平等庁を設けたオーストラリアは、従業員100人以上の社に管理職の男女比、育児や介護に対応する働き方、ハラスメントなど6指標に添った詳細な情報を国に報告することを義務付けた。これを機に男女の賃金格差が小さくなるなど改善が進んだ。
 日本でも女性活躍推進法で301人以上の企業に女性管理職比率などの公表が義務付けられたが、国への報告は任意だ。オーストラリアは国の本気度が企業を動かした事例となるだろう。
 人手不足の中、政府は女性活躍推進を掲げる。しかし家事や育児などの無償労働の負担を女性に押しつけたまま、職場での活躍を求められるのは理不尽だ。
 まずは男性を含めた社会の意識改革を進めて女性の足かせを外し、政府が本気になって待機児童解消、長時間労働の是正などに取り組むべきだ。女性活用の策を取ってこそ活躍につなげられる。