<社説>英のEU離脱延期 全力挙げて混乱回避を

 英国の欧州連合(EU)離脱を巡り、英下院は離脱合意案承認を条件に、6月末まで離脱を延期するとした政府動議を可決した。下院で2度否決された離脱合意案の3度目の採決が控えており、29日に迫る離脱期日を前に予断を許さない状況は続く。

 EUとの間で何の取り決めもないまま離脱する「合意なき離脱」となる可能性は、まだくすぶったままだ。合意なき離脱となれば英EU間に関税が復活し、激変緩和のために設けられるはずだった移行期間なしに英国はEUを離脱する。物流に重大な影響が出て、英国の経済活動や市民生活に大きな支障が出る恐れがある。
 英政府は合意なき離脱となった場合、輸入全体の87%(金額ベース)の関税を撤廃する方針を示している。何の対応もしなければEUなどとの間で急激に関税が上がる見通しとなっているが、そうした事態を避けるため、多くの品目で関税を設けず、輸入品価格の急上昇を防ぐ。しかしこれはあくまでも国内対策だ。
 欧州に進出する外国企業への影響は避けられない。英国に拠点を置く日本企業も対応に苦慮している。日産自動車とトヨタ自動車、ホンダは2018年に英国で計73万台の車を生産した。多くをEU諸国に輸出しており、離脱で関税が今の0%から10%になれば販売への打撃は必至だ。
 ホンダは21年に英国生産から撤退することを決め、トヨタも23年以降に生産をやめる可能性を明らかにしている。英国に進出する日本企業は中小も含め約千社に上る。関税による値上げ、それに伴う売り上げ減少など、懸念材料は尽きない。事業戦略の見直しは簡単ではなく、影響は計り知れない。
 英EUは18年11月、激変緩和のため20年末まで移行期間を設けるなどの離脱条件を定めた協定案で合意した。しかし英領北アイルランドと陸続きのEU加盟国アイルランドの国境管理に関する条項を巡り、英与党保守党の強硬派議員らが反発した。このため下院は合意案を1月と今月12日に否決した。
 合意案を20日までに可決すれば、6月末までの延期をEU側に求めることになっている。延期には21、22日のEU首脳会議での全加盟国による承認が必要だ。EU内には延長への異論もあり、メイ氏は党内調整に加え、各国首脳の理解を得る必要がある。
 最近の英国内の世論調査では、EU離脱を「誤り」とする人が49%で、「正しい」としたのは40%だ。離脱は16年6月の国民投票で決まった。国民も揺れ動いている。
 閣内不一致の原則が崩れるなど、英国政治の流動化が混迷に一層拍車を掛けている。影響は一国だけにとどまらない。離脱するにしても、英国は全力を挙げて混乱を回避するための努力を重ねる必要がある。



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