<社説>承認「撤回」提訴へ 真摯に協議し計画断念を

 沖縄県は、知事の埋め立て承認「撤回」を国交相が効力停止にしたことを違法として提訴する方向となった。

 2度の県知事選で民意が明確に示され、県民投票で新基地反対が有効投票数の72%を占めた。それでもなお政府は工事を続け、県を訴訟へと追い詰めた。政府と地方のこのような異常な事態が何度繰り返されるのだろうか。
 玉城デニー知事は19日、安倍晋三首相と3月に入って2度目の会談を行った。知事は、工事を中断し1カ月程度の協議の場を設けるよう求めた。そして、係争中の辺野古海域の岩礁破砕を巡る訴訟の上告を取り下げると伝えた。
 「訴訟合戦の形ではなく、対話のための環境づくり」と、知事は取り下げた理由を記者団に説明した。効力停止に対する訴訟は政府の対応を見て考えるとしていた。
 今回の面談は、第2工区への土砂投入開始が25日に迫るぎりぎりの状況で政府に判断を迫った形だ。対する首相は明確な返答をしなかった。菅義偉官房長官は同じ日の会見で「政府の考えは変わらない」と述べた。
 玉城知事が首相に面談する努力をし、対話を呼び掛けることは評価する。しかし、県民投票の結果すら無視する政府が、工事を中断して協議に入る可能性は低かった。提訴はやむを得ない。
 ただ、岩礁破砕を巡る訴訟を取り下げたのはちぐはぐ感が残る。議会の承認を得て公金を使う裁判を、成算不明の駆け引きに使ったのではないか。丁寧な説明を求めたい。
 県民投票の翌日、菅官房長官は玉城知事が普天間飛行場の危険性を除去する手法について言及していないとし「極めて残念だ。ぜひ知事の考えを伺ってみたい」と県に代替案を求める発言をした。
 沖縄に代替案を出せというのは「奪った土地を返すから代わりを寄こせ」と要求するに等しく、筋違いも甚だしい。一方、知事は日米両政府に沖縄県を加えた3者による協議機関SACWO(サコワ)構想を提案し、辺野古以外の方策を探す道筋を示している。
 再び訴訟でにらみ合うこのタイミングで、政府は工事を中断して協議に入るべきだ。
 米海兵隊が沖縄にいなければならないという主張は、運用実態からして通用しない。大浦湾には軟弱地盤が広がり工期も工費も確定できない。3頭いた絶滅危惧種ジュゴンの姿が見えなくなり、そのうちの1頭が死んで見つかった。サンゴ移植も設計変更も不可能だ。計画は暗礁に乗り上げている。工事続行は「沖縄いじめ」に映る。真摯(しんし)に協議すれば、断念という結論になるはずだ。
 4月には全国で統一地方選があり、7月には参院選もある。地方と政府がどう向き合うのかが全国で議論になるだろう。地方の民意をないがしろにする政府に全国の目が注がれていることを、政府は認識すべきだ。









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